「ルイ・ヴィトン」メンズ部門を新たに指揮するヴァージル・アブローとは
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【3月27日 AFP】 ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)は26日、メンズアーティスティック・ディレクターに、米デザイナーのヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が就任すると発表した。
ラッパーのカニエ・ウェスト(Kanye West)の長年の友人で、今回世界的ラグジュアリーブランドでクリエイティブ・ディレクターを務めることになったアブローの就任は、ストリートスタイルが現代のファッションに与える影響の大きさを物語っている。
土木工学と建築学を学んだ背景を持つ37歳のアブローは、「オフ-ホワイト c/o ヴァージル・アブロー™(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」で賛辞を浴びている。彼の最新のデザインを待ち望むファンは多い。

160万人ものフォロワーがいる自身のインスタグラム(Instagram)のアカウントに、「ルイ・ヴィトン」のヴィンテージトランクの写真を掲載し、就任を発表したアブロー。発表前には“SHM(=月曜日に重大な何か)”と書かれた白いTシャツの写真を掲載し、発表を予告していた。
アブローは、現在「バルマン(BALMAIN)」のメンズとウィメンズを率いるオリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)と肩を並べ、パリの老舗メゾンを率いる2人目の黒人デザイナーとなった。2人は、2003年から2007年の間、「ジバンシィ(Givenchy)」のメンズウェアを率いた英クリエイター、オズワルド・ボーディング(Ozwald Boateng)に続く。
■黒人のパイオニア
「LVMH」の中で最も巨大なブランドでもある「ルイ・ヴィトン」の声明でアブローは、「『ルイ・ヴィトン』のメンズアーティスティック・ディレクターに任命されとても光栄です」と語った。
その後米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)に対し自身の人種について触れ、この就任で「こういった役職に就くのに外見は問題ではないのだと若い世代に示すことができる」とした。
ブランドによると、先週「ディオール オム(Dior Homme)」のクリエイティブ・ディレクターに就任することが明らかになった英デザイナー、キム・ジョーンズ(Kim Jones)の後任として任命されたアブローは、6月にパリで開催されるメンズコレクションで、「ルイ・ヴィトン」初のコレクションを発表する。ジョーンズは、「ルイ・ヴィトン」でニューヨークのストリートウェアブランド「シュプリーム(Supreme)」などとコラボレーションをしており、アブローもストリートブランドとのコラボレーションを続けていくようだ。

カーダシアン(Kardashian)一家から、アートやカルチャーの世界に至るまで、実に多くの有名人とつながりを持つアブローは、現在最も入手困難なスニーカーの生みの親でもある。自身のブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル・アブロー」が「ナイキ(NIKE)」のためにデザインしたスニーカー“ザ・テン(The Ten)”はイーベイ(eBay)で、1足1600ユーロ(約21万円)、“Air Jordan 1”は950ユーロ(約12万円)で販売された。
■“クールの提供者”
ファッション誌「ヴォーグ(Vogue)」によるとアブローは「ファッションにおいてクールと興奮を提供してくれる人物の一人」としている。そんな彼は論争を招くことを恐れてはいない。
アブローは昨年、米国の有名なアーティストであるジェニー・ホルツァー(Jenny Holzer)とタッグを組み、イタリアでの移民危機に焦点を当てたショーを行った。

米国イリノイ州でガーナ人の両親に育てられたアブロー。裁縫師であった母親にその技術を教わった。後に、土木工学と建築学も学んでいる。ファッションの世界に飛び込んだアブローは、カニエ・ウェストと共にイタリアの「フェンディ(FENDI)」で、月500ユーロ(約6万5000円)でインターンとして働き、2012年にレーベルを立ち上げた。翌年にはウェストのクリエイティブ・パートナーとなった。
斜めのストライプで知られる「オフ-ホワイト c/o ヴァージル・アブロー」は、フーディーやTシャツなどの印象を持っていたが、今ではより洗練されたシルエットへと進化している。
また、有名ブランドとのコラボレーションによっても有名となった。タッグを組むことになった最新のコラボレーション相手は家具メーカー「イケア」。コラボレーションアイテムには有名な“Keep Off!”の文字をあしらったバッグやマットが発売されるのではないかと噂されている。
ニューヨーク・タイムズに対し、「ルイ・ヴィトン」での新しい役割について「非常にうれしい」とコメントしたアブローは、家族と共にパリに引っ越すという。「ラグジュアリーの頂点にあるブランドにとっての、デザインとラグジュアリーの次の章について考える機会を得ることは、私の途方もない夢のゴールでした」(c)AFP