強硬派仏教徒集団の台頭、覆される「平和的哲学」のイメージ
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■「イスラムの侵略」を脅威に掲げ
仏教とイスラム教は、歴史上の大部分で平和的に共存し、交易を行ってきた。しかし、仏教の原理主義者たちはイスラム教を侵略的なものとして描く。古くはマレーシアやインドネシアの古代仏教帝国を倒し、現代でもイスラム過激派の「聖戦」やイスラム教徒の出生率の高さが仏教諸国を脅かしていると主張しているのだ。
イスラム教徒に敵対的で扇動的な説教を展開してきたミャンマーのウィラトゥ師は、ミャンマー人口のわずか4%のイスラム教徒が同国の仏教徒のせん滅を企てていると信者に説き、フェイスブックでも同様の主張を繰り返し発信している。また同師が率いる「ミャンマー愛国協会」(略称マバタ、Ma Ba Tha)は異なる宗教間の婚姻の禁止や改宗の禁止の法制化を推進している。
スリランカでは過激な仏教徒らが主流化し、僧侶らが機動隊と衝突したり反政府デモを率いたりしている。26年に及んだ内戦中、仏教徒を中心とする多数派民族シンハラ(Sinhalese)の中の超国家主義者たちの怒りは、ヒンズー教徒であるタミル人に集中していた。だが、2009年にタミル人の反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ(Tamil Tiger、LTTE)」が打倒されると、強硬派の矛先は人口の10%を占めるイスラム教徒へと向かった。
スリランカのこうした運動の最も著名な指導者、僧侶のガラゴダ・アッテ・グナナサラ(Galagodaatte Gnanasara)師は、ヘイトスピーチ(憎悪表現)とコーランを侮辱した罪に問われた。最近も「コーランが禁止されるまで、家一軒一軒を訪問し運動を続ける」と発言している。
タイでは反イスラム強硬派はそれほど成功を収めてはいない。しかし、イスラム教徒のマレー人が多い南部では緊張状態が続き、過去10年間に暴動で死亡した民間人は6500人以上に上っている。その大半がイスラム教徒だ。