【3月15日 AFP】カナダの大学教授と酒造会社がこのほど、4世紀ごろに飲まれていたビールを再現し、その作り方の秘密に迫った。

 完成したビールを口にして「私には酸味が強すぎる」と語ったのは、古代ギリシャ・ローマ史の専門家で、加ウィニペグ大学(University of Winnipeg)のマット・ギブズ(Matt Gibbs)教授(古典学)だ。

 同教授は「時代と共に人の味覚がどの程度変化したかを調査することも今回の実験の一部」としながら、「現在ではほぼ全てのものに糖質が含まれていることもその例の一つ」と指摘した。

 ギブズ教授と加バーンハマー(Barn Hammer)酒造のチームはまず、エジプトの錬金術師が4世紀に記したレシピに取り組んだ。古代ギリシャ語で書かれたレシピはギブズ教授によって現代語に翻訳された。

 チームは手臼で大麦の粉をひき、サワードウのパンを作るために水を加えた。パンを焼く際には、サワードウに含まれる酵素を失活させないようにするため非常に低い温度に保つ必要があった。焼きあがるまでには約18時間の手間のかかる作業を要したという。

 ギブズ教授は、AFPの取材に「(われわれが使った)現代の器具ではそれほど低くまで温度が下がらないので、サワードウパンを低温で焼くために、スイッチを一日中入れたり切ったりし続けなければならなかった」と語った。

 チームは次に、サワードウパンをバーンハマーの発酵槽に浸した。発酵槽内の飲料は「ミルクシェイク」に似た状態から2週間で黄金色のビールになった。

「それほど悪くはなかったが、ビールと言われて大半の人が思い描くと思われる味とは全く違っていた」と、バーンハマーの共同所有者は声明で述べている。

 古代のビール作りの過程を現代の高度な技術を駆使したビール醸造と比較すると、その中心部分は何世紀を経ても基本的には変わっていないと思われることがギブズ教授には「驚き」だったという。ただ、当時の方法の方がはるかに労働集約的な作業で、職務の専門化が不可欠だった可能性も高いとの見方を示した。

 今回の実験結果はまた、古代におけるパン焼きとビール醸造との関連を示す考古学上の証拠を補強している。「当時の人々はビール作りに残り物や古いパンを用いていた可能性が高い」ことをギブズ教授は指摘した。

 今回再現したビールについては、試飲の機会を設ける予定は今のところないという。だが、ギブズ教授は大学から供与された実験助成金の残りで別の計画を準備している。それは、古代ローマの元老院議員が1世紀に記したレシピに基づいてはちみつ酒を再現する計画だ。(c)AFP