【3月18日 AFP】イラク兵士のアブドラさん(仮名、22)はイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」との戦闘中に左手を失った。だが、ヨルダンの3Dプリンターラボのおかげで、今や義手を持っている。

 アブドラさんは昨年、イラク第2の都市モスル(Mosul)からIS戦闘員を追放する軍事作戦に参加した際に地雷が爆発し、両手を負傷。失いこそしなかったが、右手にも重傷を負った。

 彼は、国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」が運営するヨルダン・アンマン(Amman)の病院に設けられた3Dプリンター義肢クリニックを受診した数多くのイラクやシリア、イエメンの切断患者のひとりだ。

 今回、匿名を条件に取材に応じ、「完全に手の代わりとはならないが、ある程度の自律性は与えてくれる。食事の際に兄弟に頼ってばかりということはなくなった」とAFPに語った。

 モスルで負傷した後、クルド自治区中心都市アルビル(Arbil)にある病院に移送され、その後にヨルダンに到着したと説明し、「今は気分が良くなった」と少し笑顔を見せた。「右手も治せると良いのだけど…」と、ジーンズと濃緑のシャツに身を包んだアブドラさんはつぶやいた。

 MSFによると、3Dプリント技術を使用すれば、稼動部分のない単純な義手の製作ができ、最新型義手を特注する際にかかる費用を大幅に削減できるという。

 研究開発専門の慈善事業MSF財団は昨年6月、ヨルダンのイルビド(Irbid)に義肢生産に特化した施設を設立。先天性の身体的障害のある人や戦場で負傷した人を広くサポートしている。

 医師らは患部の写真を撮り、サイズを測って、アンマンの北100キロに位置するイルビドの施設に送る。これらのデータをシステムに入力し、設計担当者が義肢のコンピューターモデルを作成。最終的に3Dプリンターで出力され、アンマンにあるMSFの病院へと送られる。

 近年、複数の団体が切断患者のための3D印刷を開発しているが、MSFによると、中東地域ではここが最初の施設だという。「最大級で最新の病院があるヨルダンを選んだ。紛争地域にあっても比較的安定した場所となっており、シリアやイラク、イエメンからの患者にも対応できるから」と説明した。