【3月6日 AFP】米軍の原子力空母カール・ビンソン(USS Carl Vinson)が5日、ベトナム中部ダナン(Danang)に入港した。米空母のベトナム寄港は、1975年にベトナム戦争が終結して以来初めて。かつての敵国同士は、南シナ海(South China Sea)で中国が勢力を拡大する中、軍事面での関係を強化している。

 カール・ビンソンはダナン港に4日間停泊する。ベトナム戦争中に米軍が広範囲に散布した枯れ葉剤(通称エージェント・オレンジ、Agent Orange)の被害者のための施設訪問などが予定され、極めて象徴的な寄港となる。

 一方、今回の寄港には、南シナ海で中国が進める人工島の軍事拠点化をめぐってベトナムなど係争国間で高まる緊張が影を落とす。米国は資源豊かな南シナ海における領有権を主張してはいないが、中国の影響力の拡大に対抗するため同海域の「航行の自由」をアピールしてきた経緯がある。

 先月のフィリピン寄港に次ぐベトナム寄港は、米国にとってはアジアで軍事力を誇示する意味があると専門家は指摘する。

 フィリピンがロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領の下で親中姿勢に転じた後、南シナ海の領有権を最も強く主張しているのはベトナムだ。台湾、マレーシア、ブルネイも同海域の領有権を争っている。

 米越関係はベトナム戦争後、驚くべき改善を見せ、米国船の寄港も頻繁となった。だが、米空母の寄港はこれまでなく、今回の寄港はかつて激しく敵対した両国にとって画期的な出来事として受け止められている。

 ベトナム外務省のレ・ティ・トゥ・ハン(Le Thi Thu Hang)報道官は、カール・ビンソンの寄港について「地域の平和と安定、治安、協力、発展に貢献する」との見方を示した。(c)AFP