【3月3日 AFP】地球温暖化ガスの排出抑制にかかる費用は、大気汚染によって死亡したり病気になったりする人が減ることで得られる経済的利益で十分に相殺され得るとする研究結果が2日、専門誌ランセット・プラネタリー・ヘルス(The Lancet Planetary Health)電子版で発表された。

 研究チームは、2020~2050年に世界の平均気温の上昇を産業革命前と比較して2度未満にするには22兆1000億~41兆6000億ドル(約2340兆~4400兆円)、1.5度未満にするには39兆7000億~56兆1000億ドル(約4200兆~5930兆円)の費用がかかると推計。また同期間の大気汚染による死者は前者の目標を達成できた場合は21~27%抑制されて約1億人に、後者の目標を達成できた場合は28~32%抑制されて約9000万人になると推計した。

 研究ではコンピューターモデルを使用し、今後予想される地球温暖化ガスの排気量、さまざまなシナリオでの地球温暖化ガスの抑制費用、大気汚染を原因とする死者数を試算した。化石燃料の排出物、特に微粒子物質やオゾンによる大気汚染は、肺や心臓の疾患、脳卒中、がんなどに関連があるとされている。

 研究チームは「どのような気候変動緩和策を取るかによるが、世界全体で見ると大気汚染の抑制によって節約される保健コストは気候変動緩和にかかる費用の1.4~2.5倍になるとみられる」としている。大気汚染を原因とする保健コストには治療費、患者の世話にかかる費用、生産性の損失額などが含まれる。

 こうした保健コストの節約額が最も大きいとみられる国は大気汚染に悩まされているインドと中国だと研究チームは指摘している。

 論文の共著者、気候変動バスク・センター(Basque Centre for Climate Change、スペイン)のアニル・マーカンジャ(Anil Markandya)氏はAFPに対し、今回検討した保健コストは大気汚染関連のものだけなので、それ以外の健康効果も考慮すれば節約される保健コストはさらに大きくなるだろうと述べた。(c)AFP