■「婚期」を逃す

 シリア内戦では34万人以上が死亡し、また大勢の男性が家から遠く離れた戦場に送られている。また内戦勃発前には2300万人いた人口のうち500万人以上が国外に避難し、それよりもはるかに多くの人々が国内で避難生活を送っている。

 カシム教授によると、かつては両親が息子や娘の配偶者候補を見つけていたが、内戦によってこうした社会的なつながりも失われてしまったという。

 シリア人の中には「スカイプ(Skype)婚」というクリエーティブな方法でこうした障害をくぐり抜けようとしている人たちもいる。スカイプ婚では異なる県、異なる国の花嫁と花婿がオンラインで誓いを交わし、委任した第三者に婚姻届に署名してもらう。

 ユスラさん(31)は、自分がまだ結婚していないために両親が「婚期を逃してしまうのではないか」と心配していると語る。母親には「あなたに行き遅れになって欲しくないの」「周りをよく見て、いい人を見つけなさい」と口酸っぱく言われている。

 しかしヌールさん同様、政府の翻訳者として働くユスラさんの職場も女性ばかりで、男性は結婚を考えられないほど年上しかいないという。

 すらりとした長身のユスラさんは「誰もが知っているように、シリアの若者の大部分が今起きていることの莫大な代償を払っている」とAFPに語った。そして悲しげに「国を離れた人もいれば、戦っている人もいる。経済的な理由から結婚なんて考えられない人もいる──それに言うまでもなく、この7年間に亡くなった人もいる」と語った。

 ユスラさんによると、さらに内戦によって「社会の中で宗派間の亀裂が広がった」ことで、異なる宗教的背景を持つカップルの結婚が少なくなっているという。