韓国で暮らす北朝鮮出身の高齢者ら、平昌五輪への複雑な思い
このニュースをシェア
■南北を隔てるたった1本の線
朝鮮戦争は講和条約によって終結したのではなく、休戦協定によって停止状態にあるだけだ。厳密に言えば韓国と北朝鮮は今も戦争状態にある。その理由から、南北を隔てるDMZは必要だ。
アバイ村の小さな家々は、屋根が明るい色に塗り替えられたこと以外、当時からほとんど変わっていない。狭い路地には、豚の腸詰めや冷麺といった咸鏡道風の料理を出す飲食店がぎっしり並んでいる。ただ週末には、韓国で大人気のテレビドラマのロケ地となった砂浜に観光客が押し寄せるようにはなった。
ファンさんは、DMZから北に146キロの場所にある元山(ウォンサン、Wonsan)について「最高の港町だ」と誇らしげに話す。だが、通信手段がないために置いてきた親族と連絡を取ることはできない。会うことなど夢のまた夢だ。
北朝鮮の五輪参加についてキムさんは、「われわれは同じ民族だ。彼らが参加しなかったら、それは残念なことだ」と述べる。「彼らは韓国のすぐ隣にいて、私たちを隔てているのはたった1本の線しかない。来ないなんてことはあり得ないだろう?」
大会中、北朝鮮からは出場選手たちとともに、芸術団や応援団、報道陣を含めた代表団数百人が平昌に派遣される。
北朝鮮の人々にとっては韓国での生活を垣間見る機会となり、また市民同士の接触につながるかもしれないとファンさんは考えている。そして「今まで閉じられたままだった扉が開くかもしれない」と期待を込めた。
キムさんはそのドアを通って故郷へと戻ることを願ってやまない。「生まれ故郷の近くで暮らせればと思う。裕福だろうが貧しかろうが関係ない。ただ昔のように故郷の砂浜を見ていたい」「人生の終わりが近くなりその思いはさらに強くなった。故郷の地に骨をうずめることができればどれだけいいだろう」と語った。(c)AFP/Hwang Sunghee