■悪夢、ストレス

「すでにトラウマを抱え、専門家のケアが必要な子どもたちが無理やり帰還させられれば、心の傷はさらに深くなってしまうことは分かっている」と、国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)のジャスティン・フォーサイス(Justin Forsyth)事務局次長は、バングラデシュ南部コックスバザール(Cox's Bazar)のバルカリ(Balukhali)難民キャンプでAFPの取材に懸念を語った。

 さらにフォーサイス事務局次長は、「悪夢やおもらしや自傷行為。これらは子どもたちが極限状態に置かれたときに始めることです。再び同じような暴力が起こるのを見てしまうのではないかと恐れて、子どもたちが震えている証しなのです」と話した。

 少数ながら難民キャンプで活動している心理学者たちは、比較的安定した新しい暮らしにようやく慣れてきたロヒンギャの子どもたちを送還すれば、長期的な(心の)傷を生じさせる可能性があると述べている。

 難民キャンプにはわずかながら子どものためのセーフゾーンがいくつか設けられ、お絵かきや歌、演劇や読み聞かせなどによって、つらい生き延びるための生活にいっときの休息を与える場が提供されている。一方、ミャンマー政府がどんな準備をしているかはほとんど情報がないが、先月下旬に明らかになった画像に写っていた帰還プロセスセンターは、全く対照的に鉄条網で覆われていた。

 バングラデシュ・クトゥパロン(Kutupalong)の難民キャンプで働く同国政府の臨床心理学者、シラジュム・モニラ(Sirajum Monira)氏は、ロヒンギャの若者や子どもたちを帰還させることは、単に彼らを国境の向こう側へ戻す作業ではないと強調し、「今回ミャンマーで起きたことは簡単に忘れられることではない。彼らの人生で一生負っていくことになるだろう大きな出来事だ」「送還し、ふるさとへ戻った後も彼らには精神的な支援が必要だ」と述べた。

 仏教徒の暴徒に父親を殺された10歳の少年にとっては、今いるところにとどまるほうがよいのかもしれない。「ここに永遠にいたっていいんだ」と話した少年は、ミャンマーでは一度もできなかった、学校に行くことが特に楽しいと語った。(c)AFP/Annie BANERJI and Redwan AHMED