【2月1日 AFP】ポーランド議会は1日、ナチス・ドイツ(Nazi)によるホロコースト(Holocaust、ユダヤ人大量虐殺)が行われた強制収容所を「ポーランドの死の収容所」と表現したり、いわゆる「第三帝国(Third Reich)」の犯罪にポーランドが加担したと非難したりした人物に、罰金または最大3年の禁錮刑を科す法律を可決した。イスラエルは強く反発している。

 ポーランドの対外イメージを守ることが新法の狙い。愛国主義的な政治理念を掲げる右派の与党「法と正義(PiS)」が過半数を占める上院は1日、賛成57、反対23、棄権2の賛成多数で法案を可決した。同じく与党が多数派の下院では先月26日に可決済みで、アンジェイ・ドゥダ(Andrzej Duda)大統領が署名をすれば成立する。

 下院での可決後、国外からは法案に抗議する声が上がっていた。イスラエル政府は新法の条文の一つについて、ホロコーストへのポーランドの関与を否定しようとする試みだと指摘し、法案の取り下げを要求。ベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は先月28日、「事実を歪曲(わいきょく)し、歴史を書き換え、ホロコーストを否定するまねは決して許さない」と言明した。

 また、米国務省のヘザー・ナウアート(Heather Nauert)報道官は31日、「ホロコーストの歴史はつらく、複雑だ。『ポーランドの死の収容所』などの表現は不正確で、誤解を招き、有害だという点は理解する」と前置きしながらも、新法は「言論の自由を侵害し、学術分野での使用をも制限しかねない」と声明で指摘。施行されればイスラエルや米国をはじめとする諸外国とポーランドの外交関係にも影響が及ぶと懸念を表明していた。

 第2次世界大戦(World War II)中にナチス・ドイツの侵攻を受け占領されたポーランドでは、600万人の市民が命を落とした。うち300万人がユダヤ人だ。ユダヤ人を助けた人は、たった1杯の水を提供しただけでも占領下のポーランド国内に作られた強制収容所に送り込まれた。

 中東エルサレム(Jerusalem)のホロコースト追悼記念館「ヤド・バシェム(Yad Vashem)」には、6700人余りの非ユダヤ系ポーランド人がナチスに立ち向かった「諸国民の中の正義の人(Righteous Among the Nations)」として顕彰されている。(c)AFP