【2月1日 AFPBB News】四輪のついた歩行補助具で体を支えられたタヌキ。勢いよく前進するも、方向転換できずしばしば壁にぶつかることもご愛嬌(あいきょう)──。神奈川県横浜市の野毛山動物園(Nogeyama Zoo)では、おととしに保護されたホンドタヌキが、傷病鳥獣を保護し野生に返す取り組みを伝えるガイド役として活躍している。

 タヌキの名は「ハマー」、1歳のオス。2016年6月に市内の消防所敷地内で保護され、消防車で同動物園に搬送されたという武勇伝を持つ。体重わずか214.5グラムの瀕死(ひんし)の状態から一命をとりとめたが、生まれつき後ろ足に障害があり、自立歩行が困難なため野生に戻さず園内で飼育されることになった。リハビリ運動のために飼育員が歩行補助具を作製。成長に合わせ何度も改良を重ね、今ではハマーは力を込めやすい前足で地面を跳ねるように蹴って進むようになった。

 保護から半年後には、飼育員や獣医師とともに傷病動物の保護活動を紹介するガイド役としてデビュー。タヌキのほか、ヒヨドリやオオタカなど鳥類を含む保護動物を担当する飼育員の五十嵐真由美(Mayumi Igarashi)さんは、「ガイドはハマーの体調や天候を見ながら不定期に開催している。障害があるが、お客様から『がんばってるね』と声をかけられるとうれしい」と目を細める。

「保護した市民の気持ちに寄り添い、助かる命を救いたい」と話す五十嵐さんだが、保護動物の中には、人の介入が早すぎたばかりに近くにいた親が警戒し育児を放棄する例も少なくないという。「ハマーにとって保護されたことが幸せかどうか人間では判断できないが、ここでの役目を果たしてくれている」と、ハマーが来園者にとって生態系や身近な野生動物のことを考えるきっかけになることを願っている。(c)AFPBB News