【1月31日 AFPBB News】子どもたちの憧れの職業「ユーチューバー(YouTuber)」。動画共有サイト、ユーチューブ(YouTube)上に制作した動画を投稿するユーチューバーは、スポーツ選手や芸能人と並び、子どもたちの「就きたい職業」の選択肢になりつつある。そんな中、小学生向けの体験型教室「ユーチューバー・アカデミー(YouTuber Academy)」が人気を集めている。

■将来の夢は「ユーチューバー」

 この日の「授業」のテーマは、科学実験。撥水(はっすい)スプレーを吹きかけたキッチンペーパーが水をはじく様子を、言葉や身ぶりで伝えながら撮影。編集で効果音や文字などを付け加えていく。出演から、機材のセッティング、撮影、編集まで、すべて子どもたち自身で行う。

 昨年春より関東を中心に、大阪や秋田などでも開催を重ね、これまでに参加した子どもは350人以上。動画作成のほか、クイズ形式で情報リテラシーを学び、被写体としての感情表現方法を練習する。

「野球選手になりたくて教室に通うのと同じように、ユーチューバーになりたい子どもたちが通える場所があってもよいのではないかと考えた」と運営会社フルマ(FULMA)の小島佑依里(Yuiri Kojima)さん。毎日ユーチューブで約10本動画を見ているという盛大夢(Hiromu Sakari)君(10)も将来の夢を「科学者、ユーチューバー、プログラマー」と打ち明ける。

■子どもたちにこそ必要?情報リテラシー

 ユーチューバーは子どもたちから支持を集める一方で、「社会的にはイメージがよくない。新しいものへ警戒心もある」と小島さん。「インターネットは危険な印象があるが、今後子どもたちから離すことはできない。使いこなすためのルールや知識を身に付ける必要がある」

 教室では、必ず子どもたちに「動画は一生残ること」と「個人情報を守ること」を説明する。「動画は削除できる」と反論する子どもにも、「一度公開すると、自分が削除しても、他の人がすでに保存している可能性がある。今日も、大人になって見ても恥ずかしくない動画を撮ろうね」と講師が話しかける。公開すべきでない個人情報についても、子どもたちと一緒に具体例を考えていく。

「今回で11回目の参加。動画を作って編集できるのが好き」と原田隼佑(Shunsuke Harada)君(10)。ユーチューブは小学1年生の時から見始め、ゲーム機で動画を撮影することもあるという。父敏光(Toshimitsu Harada)さん(57)も「同じ興味を持った子たちとつながりができて本人も楽しんでいる」と子どもの様子を喜びながら、「ユーチューブとの向き合い方を、本人が一番理解していなければ」と期待を寄せる。

■「自己表現」のツールとして

 教室で制作した動画は、一般公開はしていない。「再生回数を稼ぐのではなく、『やりたい』や『好きなこと』を表現するツールとして動画を作ってもらっている」と小島さん。動画の内容も、子どもたちのアンケートをもとに企画し、教育的な価値を踏まえたものだ。

 でき上がった作品を見て、盛君の母豊美(Toyomi Sakari)さん(44)も「非常に良くできている。何より、本人が楽しそう」と笑顔を見せる。原田君の父敏光さんは、教室で学ぶ表現が「学校や発表会とは違った表現」だと感じるという。「普段はおとなしい子も前向きにプレゼンしたり、面白い」

 現在は単発での開講だが、4月からは通年の教室も開講予定だという。(c)AFPBB News