【1月19日 AFP】昨年、隣国ミャンマー軍の流血の弾圧を逃れたロヒンギャ難民65万人以上が国境を超えて流れ込んだ影響により、バングラデシュの難民キャンプで同国ではそれまでほぼ根絶状態にあったジフテリアが瞬く間に広がった。キャンプに設けられた簡易診療所では、マスク越しに苦しい表情を見せながら呼吸する幼い子どもたちが治療を受けていた。

 世界保健機関(WHO)の報告によると、発生件数は3600件以上となっている。すでに子どもを中心とする少なくとも30人以上が犠牲となり、キャンプ付近に住むバングラデシュ人の中でも感染者が現われ始めているという。

 国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」が運営するジフテリア専門班の看護師長、カルラ・プラー(Carla Pla)さんによると、キャンプに到着する子どもたちの症状は深刻だという。

 12月にこの診療所を開設してから600人近くが診察を受けており、まん延する栄養失調や水媒介性の疾病など、キャンプ内の他の病気とも闘っている医師らにさらに大きなプレッシャーを与えている。AFPの取材班が訪れたときにいた患者の大半は幼い子どもで、呼吸をするのも苦しそうだった。

 バングラデシュ当局は他の疾病対策については準備を進め、公衆衛生の大災害を防ぐために新たに到着する難民には即座にコレラやはしかの予防注射を行っていた。だが、ジフテリアの流行は予期していなかった。

 ジフテリアは呼吸困難や心不全を引き起こし、治療しなければまひや死にも至る。12月になってバングラデシュ当局は大規模なワクチン接種を開始。これまでに15歳以下の子ども32万近くが接種を終え、今月中にさらに16万人の子どもが接種を受ける。

 ジフテリアは世界ではワクチン接種率が高く、まれな病気となりつつある。しかし、ロヒンギャ難民の出身地であるミャンマーのラカイン(Rakhine)州は貧しい上、イスラム教徒のロヒンギャに対しては政府が課したさまざまな制約があり、子どもたちの多くはワクチン接種を受けていない。

 プラーさんによると、実際のジフテリア患者を初めて診察する医師も多く、「教科書の中にしか存在していなかった病気」の治療を行うことは困難を伴うという。また現在、診療所には400床のベッドが用意されているが、医師が不足しているため国外から医療スタッフを招く必要があることが指摘されている。(c)AFP/Sam JAHAN