■表面化しない多数の事件も

 2015年、カスル市で大規模な小児性愛者組織の存在が明るみに出た。子どもたちはカメラの前で男たちから性的虐待を受け、男らはその映像を公開すると家族を脅迫していた。被害を受けた子どもは少なくとも280人に上る。

 警察は親たちの訴えにもかかわらず行動を起こさず、遺族と警察が衝突するに至って初めて犯人が逮捕された。

 子どもの保護の問題に取り組む支援団体「サヒル(Sahil)」によると、昨年1~6月の間にカスル市で記録された子どもが犠牲となった事件は、性的暴行や殺人を含め129件に上っている。

 犠牲者の親たちは自分たちの無力さに打ちのめされている。昨年7月に8歳のめいが性的暴行を加えられた上に殺されたムハンマド・アユブ(Muhammad Ayub)さんは警察から、犯人を逮捕できなければ何もできることはないと言われたと語った。

 これまで、襲われた後に生きて逃れることができた子どもは6歳の少女1人だけだと考えられている。この女児は昨年11月、性的暴行を加えられた上に虐待されてゴミの山に捨てられていたところを発見された。集中治療室で何か月も過ごしている少女は首から下がまひし、話すこともできない。

 パキスタンで子どもに対する性的虐待が初めて刑法で違法となったのは2016年、最初の小児性愛事件が発覚した後だ。だが性教育が存在しない保守的なイスラム教国のパキスタンでは、表面化しない多数の虐待事件が報じられないまま放置されている、と専門家らは恐れている。

 サヒルの事務局長、マニゼ・バノ(Manizeh Bano)氏は「いつも強い人が虐待者となり、弱い人が犠牲者となる」と語った。(c)AFP/Khurram SHAHZAD