■「絶対的な水不足」

 パキスタンでは水関連のインフラ整備が遅れている。これは明白な事実だ。持続可能開発政策研究所(SDPI)の研究員であるイムラン・ハリド(Imran Khalid)氏は、「環境が政策課題の一つとなっていない」国では、「処理施設などはほぼ存在しない」と警鐘を鳴らす。

 しかもパキスタンでは、水が汚染されているだけでなく、その量も乏しくなってきている。

 公的機関の予測によると、人口が1960年当時の5倍にあたる約2億700万人まで増加した同国では、2025年までに水源が枯渇する恐れがあり「絶対的な水不足」に直面することも考えられるという。

■「教育不足」

 パキスタン農業研究評議会(PARC)のバシール・アフマド(Bashir Ahmad)氏によると、巨大なヒマラヤ(Himalaya)氷河を抱え、モンスーンの影響による降雨や洪水に見舞われるパキスタンだが、大規模な貯水池はわずか3か所しかない。

 また公式統計によると、パキスタンの水の90%は農業用として利用されているにもかかわらず、英植民地時代に造られた大規模な灌漑用水路は劣化してしまっているという。

 パキスタン水資源調査評議会(PCRWR)のムハンマド・アシュラフ(Muhammad Ashraf)氏は、「すべての都市部で地下水面は日に日に下がっており、危機的状況になりつつある」と警鐘を鳴らす。同氏によると、地下水のくみ上げでは、ヒ素濃度が高い深さにまで徐々に迫っており、事実昨年8月に発表された国際調査の結果によると、約5000万~6000万人が、ヒ素に汚染された水を日々利用していることが指摘されている

 だが、こうした状況においても無駄遣いされる水の量は以前と変わっていない。首都イスラマバードでは路上の埃を大量の水で洗い流し、洗車は毎日のように行われ、そして緑の芝生には惜しげもなく水がまかれ続けている。(c)AFP/Joris FIORITI