【12月31日 AFP】物価高への不満をきっかけに始まった反政府デモがイラン各地に拡大している。デモは30日、3日目に突入し、首都テヘラン(Tehran)ではデモの参加者が市役所を襲撃した。一連の動きに対してイラン政府は、これ以上の「違法集会」を開かないよう警告し、携帯電話のインターネット接続を遮断した。

 ソーシャルメディアには西部ホラマバード(Khorramabad)やザンジャン(Zanjan)、アフワーズ(Ahvaz)で行われた数千人規模のデモ行進とされる動画が投稿された。また、ドルード(Dorud)で警察の発砲により数人が死亡したとの情報が短時間内に拡散した。

 現状では、次々と出てくるうわさと移動の制約、さらには政府系通信社のほぼ全面的な報道規制と重なり、情報の確認が一層困難になっている。AFPの取材班によると、イラン当局は携帯電話のインターネット接続を遮断したとみられ、少なくともテヘランでは午前0時直前に主なネットワークが途切れた。

 混乱する状況について保守系メヘル(Mehr)通信は、テヘラン中心部の市役所を襲撃するデモ参加者の動画を投稿。警察車両を反転させたり、イラン国旗を燃やしたりする参加者らの姿を伝えていた。

 これに先立ち市内の大学周辺では、数百人規模の街頭デモがあった。道路を封鎖した参加者からは反政府スローガンを叫ぶ声が聞こえた。一方、このデモに対抗する形で政府支持派の数百人が大学の入り口を占拠し、「扇動者に死を」と気勢を上げた。

 反政府デモは28日、国内第2の都市マシャド(Mashhad)で物価高への不満を契機に始まったものの、間もなく同国のイスラム政権全般に矛先が向けられるようになった。

 イランでの混乱についてドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領はツイッター(Twitter)に、イラン国民が変革を求めており、「圧制を行う政権はいつまでも持続しない」と投稿している。

 イランでは今月に来年度予算案が発表されたが、福祉費の削減や燃料価格の引き上げに対して人々の反発が高まっている。2009年の反政府デモが革命防衛隊に武力弾圧された前例があるため、中間所得層は変革を求めて街頭デモを行うことをあきらめてきた。

 マシャドのデモを最初に伝えた改革派メディア「ナザル(Nazar)」の幹部は、大統領選の不正疑惑が引き金となった09年のデモと比較して、今回のデモでは経済がより重視されていると指摘している。

 ハッサン・ロウハニ(Hassan Rouhani)大統領は13年の就任以来、金融業界の浄化や景気のてこ入れに取り組んでいるものの、進ちょくが遅すぎると見る向きが多い。(c)AFP/Ali Noorani and Eric Randolph