■米指導者らの暗殺

 米国を苦悩させる人種差別への闘いにとって、この年は暗黒の年だった。4月4日、黒人牧師でノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)の授賞者であるマーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King Jr.)が、脱獄囚の白人によって暗殺された。

 この暗殺に抗議するデモが米全土で起こった。その後、ジョンソン大統領はキング牧師が要求していた一連の公民権法のうち、最後まで成立していなかったうちの一つ、住宅に関する差別を禁止する法案に署名した。

 6月5日にはさらなる政治的暗殺が米国を揺るがした。大統領選の選挙活動中だったロバート・F・ケネディ(Robert F. Kennedy)上院議員が、パレスチナ系移民に銃撃されたのだ。1963年に暗殺されたジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)元大統領の実弟だったロバートは翌日死亡した。

■「春」を認めなかったソ連

 反乱の嵐は共産主義国チェコスロバキアにも達した。1月、アレクサンデル・ドプチェク(Alexander Dubcek)が与党共産党の第1書記(党首)となり、「人間の顔をした社会主義」への改革導入を試みた。だが、この「プラハの春(Prague Spring)」を受け入れがたいものと捉えたソ連政府は8月、戦車と軍隊を送り込み、改革の希望を打ち砕いた。

■明るみに出たビアフラの惨事

 また1968年は、ビアフラ(現ナイジェリア南東部)の人道危機に世界の関心が向けられた。ビアフラは前年宣言した独立を維持するために、ナイジェリアと内戦中だった。

 飢餓に苦しむビアフラの人々の映像が世界に届くと、新たな種類の国際的な人道支援運動が盛り上がりをみせ、その後まもなくして国際医療支援団体「国境なき医師団(MSF)」が結成された。30か月に及ぶ戦闘とナイジェリアによる封鎖で約100万人の命が失われたが、その多くは餓死だった。(c)AFP