■奔放なプレーを避ける弊害も

 自身のスカウトとしてのキャリアを飛躍させるような新たなタレントを見つけるために自費を投じ、トライアルに4人の少年を連れてきたジェシー・オリベイラ(Jacy Oliveira)さんは、「移動するお金がないという理由で多くの素晴らしい選手がトライアルのチャンスさえないんです」と話し、「現時点では出費しかありませんが、きっと輝くスターに出会えると信じています」と語った。

 この日プレーした少年の中でロナウド・ファリア氏の目に止まったのはたったの1人だった。その9歳の少年は、年上で体の大きな相手をいとも簡単にドリブルで抜き去ったのだ。 しかし、彼の双子の兄弟はとても緊張した様子で良いパフォーマンスができなかった。関係者はその子に対して「恐れるな。いつものように、兄弟とストリートでしているようにプレーしなさい」と声をかけていた。

 スカウトが注目しているのは選手の才能だが、個人主義に走りすぎずチームの中でプレーできるかどうかにも注視している。しかし、このことは問題をはらんでいる。子どもたちは大人のシステムをまねしようとし、自由なプレーが欠けているのだ。

 ランゲル氏は「子どもたちはあらかじめプログラムされてしまっている。自由奔放なプレーはどんどん減っているんだ」と話し、「私たちが探しているのは一連の特徴なんだ。ボールを持ったときの落ち着き、チーム内でほかの選手とのコミュニケーションといったものだ。すべてが影響を持つからね」と述べた。

 しかしながら、15歳のカイオ・ロドリゲス(Caio Rodrigues)くんは、目立たないことが重要だと話しており、「トライして目立とうとすると、結果的にミスをしてしまいます。見ている人はシンプルにプレーし、ボールをパスすることを求めているのです」と語った。

 13歳のペドロ・エンリケ(Pedro Henrique)くんは、インスピレーションを得るためにフランス・リーグ1のパリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)でプレーするネイマールや、イングランド・プレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)のポール・ポグバ(Paul Pogba)の映像を見ていると明かし、「大きくなったら彼らと一緒にプレーしたい。代表でネイマールとプレーしたいです」と語った。(c)AFP/Louis GENOT