【1月1日 AFP】ブラジル・リオデジャネイロで行われたカンピオナート・ブラジレイロ(ブラジル全国選手権)1部、バスコ・ダ・ガマ(CR Vasco da Gama)の若手選手発掘のトライアル。ある女性は、12歳の息子がキャリアの第一歩を踏み出すことを願い、草をかき分けてその姿を見つめていた。トライアルには9歳から12歳の少年200人が参加し、国内有力クラブのスカウト陣がピッチに視線を送った。父兄の立ち入りは認められておらず、どうにかしてその様子を見ようと草むらをかき分けて丘を登った人の姿もあった。

 33歳のその女性は「どのような犠牲も払う準備はできています。私は無職で、移動するお金がないときもあります。借金をしてでも、私はあちこちを駆けずり回っているんです」と話した。彼女の息子はバスコのライバルであるフラメンゴ(Flamengo)を応援しているが、今は未来のスターになることを目指し、ファン心理を抜きに大きな舞台に立とうと努力している。

「次世代のネイマール(Neymar da Silva Santos Junior)」になることはサッカー狂の国民の大半の夢であり、貧困という環境でチャンスに飢える才能が尽きることはない。 ――しかし、そこにたどり着くのは簡単なことではない。バスコのスカウト部長を務めるウェルネル・レオナルド・パソス(Uerner Leonardo Passos)氏は「ここを通過したわずか10パーセントの少年たちは、これからクラブ本部で行われる数々のテストに臨むことになる」とその厳しさを教えてくれた。

 トライアルは3日間かけて行われ、3か月に1度実施されている。年齢別にグループ分けされ、少年たちには20分の試合でスキルを披露する機会が与えられる。

 バスコが発掘した最大のスターで、1994年W杯の優勝メンバーであるロマーリオ(Romario)氏を兄弟に持つスカウトのロナウド・ファリア(Ronaldo Faria)氏は、「ブラジルサッカーの秘密はファベーラ(スラム街)にある。子どもたちはストリートやラフなピッチでプレーしている」と話す。

 ファベーラは落書きだらけの街で暴力事件が頻繁に起きることで知られ、そこで育った多くのブラジル人が厳しい環境から抜け出す夢を描いている。バスコはファベーラ出身の才能発掘に重点を置いており、タレント発掘部門のルイス・ランゲル(Luiz Rangel)氏は「われわれのスカウトはファベーラに頻繁に足を運び、ポテンシャルのある子どもがいた場合に連絡をもらえるようにネットワークを作っている」と明かした。