■既成概念に合致しないからといって子どもを異常と見なしては駄目

 しかし、英国のすべての親がこうした考えに賛同しているわけではない。

 英国民保健サービス(NHS)は今月、英イングランド北西部ランカシャー(Lancashire)の小学校で行うアンケート調査から、性別に関する質問を削除することを余儀なくされた。10~11歳の児童を対象としたこの調査には、生まれつきの性別と「中身が一致」しているかを問う質問があり、また性別として「女の子」「男の子」「その他」という3つの選択肢が用意されていたが、親や議員からの批判が相次いだことを受けて削除したという。

 しかし親がどう感じているとしても、性自認の問題に直面する子どもや若者の数が増えていることを示す証拠がある。

 ロンドンとリーズ(Leeds)の若者たちを対象とした保健機関「性自認開発サービス(GIDS)」によると、相談件数は2010年にわずか95件だったが、今年は現時点で2016件に上っている。

 英国では2010年、性別や性自認に基づくいかなる形の差別も禁じる「平等法(Equality Act)」が施行され、以降さまざまな規則が見直されてきた。

 英国国教会(Church of England)でさえも、この問題に対する方針を修正する動きが出ている。

 同教会は先月、運営する学校4700校に対してガイドラインを発行。そこには、「幼年期というのは、間違いを犯し、物事に挑戦し、プロジェクトやアイデンティティーを模索することのできる時期でなければならない」とあった。

 さらに、教師がコメントしたり褒めたり指示を与えたりする際にどんな言葉を使えば良いかを示しているとするこのガイドラインは、「子どもたちの態度が性別に対する既成概念や遊具の好みに合致しないことのみを理由に、『標準的でない』『異常だ』『問題あり』などと見なしたり評価したりすることは避けた方がよい」と述べている。(c)AFP/Antoine POLLEZ