■掲載が期待される店

 台湾の美食家たちの間では、ご飯の上に豚の角煮が盛られた「魯肉飯(ルーローファン)」を1杯30台湾ドルで提供している簡易食堂「金峰(Jin Feng)」が、ミシュランの星を獲得するのでないかとの臆測が飛び交っている。

 しかし店長のウー・スーヤンさんはこれに無関心の様子で、長い列をつくっている観光客や地元の人々の評判の方が大事だと話し、「お客さんが来ることこそが十分な証し。わざわざ誌面に掲載してもらう必要はない」と語った。

 台北で展開する5軒の店がほぼ毎晩満席となる「欣葉(Shin Yeh)」。開業40年になる同店は、自慢の伝統料理にミシュランが関心を示してくれることに期待を寄せている。店名に自らの名前を掲げるオーナーの欣さんは、台湾の若者たちの間で伝統料理の人気が落ちていることを嘆く。

 1皿280台湾ドル(約1100円)の豚レバーのカツレツから、1人前680台湾ドル(約2600円)の珍味カラスミまで、同店の価格帯は路上の屋台よりは高めの設定だが、高級レストランと比べればはるかに安い。調査員が同国を訪れていることについて欣さんは「星を獲得する飲食店が何軒だろうと、台湾にとっては大きなプラスになると思う」とコメントしている。

 しかし一部からは、ミシュランの星を獲得することを懸念する声も上がっている。

 台湾の定番料理、牛肉麺を1万台湾ドル(約3万8000円)で提供している超高級店「牛●●(Niu Ba Ba、●の漢字構成は父に巴)」の経営者トニー・ワンさんは「(もし星を獲得したら)掲載されたらかなり有頂天になるでしょうが、同時にとてつもないプレッシャーも感じそうだ」と話す。

 同店のメニューには1杯500台湾ドル(約1900円)から食べられるより安い麺類もあるが、超高級麺は1日平均3杯売れるという。値段は食材の質を反映していると話すワンさんによると、これまでさまざまな種類の牛肉を研究するために、6000万台湾ドル(約2億2800万円)と数年の月日を費やしてきたという。