【12月10日 AFP】ロシア北極圏の積雪地帯に建設された大型液化天然ガス(LNG)プラントで8日、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領らが出席して初めての出荷を記念する式典が行われた。

 氷点下28度の厳寒の中、プーチン大統領は北極圏のヤマル半島(Yamal Peninsula)サベッタ(Sabetta)港で積み込み作業を見守り、作業員らを祝福した。

 このプロジェクトのため、ロシアの民間企業で主に天然ガスと液体炭化水素の探鉱・生産・精製・販売を手掛けるノバテク(Novatek)は、仏石油大手トタル(Total)や中国石油天然ガス集団(CNPC)と提携した。プラントの運営はプロジェクト会社のヤマルLNG(Yamal LNG)が行う。権益はノバテクが50.1%、トタルが20%、CNPCが20%、中国政府のシルクロード基金(Silk Road Fund)が9.9%を保有する。

 初めて出荷されるLNGは、2014年にモスクワの空港の滑走路で発生した事故で死亡したトタルの当時の最高経営責任者(CEO)、故クリストフ・ドマルジェリ(Christophe de Margerie)氏の名前をとって命名されたタンカーに積み込まれた。

 プロジェクトの総投資額は270億ドル(約3兆1000億円)。当初の生産能力は年間550万トンで、2019年の年初までに1650万トンに引き上げる。

 ヤマル半島は、炭化水素埋蔵量は非常に大きいものの、モスクワから約2500キロ離れた北極圏の孤立地域にある。一年の大半は氷に覆われ気温は氷点下50度にまで低下する。プロジェクトが始まった2013年以降、ガス貯蔵施設とLNGプラントの他、空港と港湾それぞれ1か所の建設も必要となった。

 資金調達でも困難に見舞われた。米国が対ロシア経済制裁の一環としてノバテクを制裁対象にしたことから西側の金融機関からの借り入れが事実上不可能になった。最終的には中国の提携先が乗り出して資金問題を解決した。

 天然ガスの輸出で世界首位のロシアはパイプラインによる欧州向け供給が輸出収入の大きな割合を占めており、LNGの輸出でもカタールを抜いて世界一になることを目指している。

 ロシアはヤマルLNGプロジェクトによってアジア市場でのプレゼンスを強化するとともに、大きな技術的困難を乗り越えて豊富な埋蔵量を誇る北極圏のガス資源を活用したい意向だ。