■「新たな中東の姿」

 クシュナー氏はここ数か月、イスラエル・パレスチナ間の和平交渉をめぐり水面下で作業を進めてきた。しかしある外交筋は、和平計画の公表は今後しばらく行われないだろうと話す。最短でも2018年前半以降になるとの見方だ。

 米シンクタンク「アトランティック・カウンシル(Atlantic Council)」のバーバラ・スレイビン(Barbara Slavin)氏は、「クシュナー氏の和平努力は、対イラン政策においてイスラエルとの協力関係を正当化するためにサウジに与えたイチジクの葉(不都合なものを覆い隠すためのもの)のようなもの」と語る。

 トランプ氏とクシュナー氏は、政権発足直後から、共通の敵イランに対する同盟国として、サウジアラビア──とりわけムハンマド・ビン・サルマン(Mohammed Bin Salman)皇太子──との親密な関係を築いてきたのだ。

 一方で、エルサレムへの首都移転が大きな政情不安をもたらすとは思わないとする意見もある。

 匿名を条件に取材に応じた中東情勢に詳しいある外交官は、「この地域では、政治的な地殻変動がいくつも起きている」としながら、「これが新たな中東の姿だ」と語る。

 3日にめずらしく公共の場に姿を見せたクシュナー氏も、シーア派イランに対して地域のイスラム教スンニ派(Sunni)アラブ諸国がイスラエルと協調するのであれば、和平のための一つの機会になるとの考えから、この流れに困惑している様子はみられなかった。

 クシュナー氏は「彼らはこの地域の脅威に目を向けている。彼らはこれまでイスラエルを敵視してきたが、20年前に比べれば、イスラエルとの同盟関係ははるかに自然なことだと考えていると思う」と語っている。(c)AFP/Francesco FONTEMAGGI