■石炭は中国の他、日本、韓国、台湾にも

 羅津港から見える丘の上には、既に閉鎖された精油所がある。共産主義兄弟国の旧ソ連が、かつて北朝鮮政府に安価または無料で供給していた原油を精製するのに使用っていた施設だ。ここから羅津を見下ろすように、北朝鮮の建国の父・金日成(Kim Il-Sung)国家主席と息子であり後継者の金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記の大きな像が設置されている。羅津での経済のルールは緩めだが、それでも国内のその他の地域と同様に、街の至る所に北朝鮮政府によるプロパガンダメッセージが掲げられている。

 ロシアと北朝鮮の両政府は長い間、兄弟のような関係にある。それを象徴するかのように、ラソンコントランス社には2001年にモスクワで撮影された、故金正日氏とウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)ロシア大統領の会談時の写真が飾られていた。この合弁企業はロシア側が70%所有し、残りの30%は羅津港が所有している。

 ミンケビッチ氏は、北朝鮮の労働力を活用することで、羅津の労働コストはロシアの港湾と比べ30%から40%の削減となると話す。また、ロシア産の膨大な量の石炭は、中国以外にも、エネルギー大量消費国だが資源に乏しい日本、韓国、台湾へと送られているため、ロシア太平洋岸の競合会社らもほぼ全面稼動となっていることを説明した。

 羅先経済貿易地帯は北朝鮮が商取引と企業を誘致するために設けられた経済特区だ。特区は中国とロシアと国境を接しているが、北朝鮮の人々がここに入るためには特別な許可が必要となっている。合弁企業であるラソンコントランス社は、北朝鮮人従業員約300人とロシア人従業員110人を擁している。

 ミンケビッチ氏は、フェンス越しに見える石炭の黒い山を指差しながら「フェンスの向こう側にあるのは北朝鮮の石炭。制裁下に置かれたのでそのままそこにおいてある」としながら、同社が国連の禁輸措置を遵守している証拠だとAFPに述べた。

 また、これまでにあったという働きかけについては詳細を明らかにせず、「いろいろな人たち」からアプローチされたとだけ語った。(c)AFP/Sebastien BERGER