【12月31日 AFP】コロンビアの女子刑務所で服役中のアレス・マルティネス受刑者(26)は身なりを整え、双子のわが子の写真にキスをして「仕事」に出掛ける。職場は監房から数メートル先にある、南米初の「刑務所レストラン」だ。

 同国北部のカルタヘナ(Cartagena)にあるサンディエゴ(San Diego)刑務所では、南アフリカの故ネルソン・マンデラ(Nelson Mandela)元大統領も収容されていたポルスモア刑務所(Pollsmoor Maximum Security Prison)やイタリア・ミラノの刑務所の例に倣い、受刑者たちに調理や接客の経験を通じてより良い社会復帰への準備をさせる。

 2015年に恐喝罪で実刑6年の有罪判決を受けたマルティネス受刑者は、昨年レストランで働き始めてから刑務所での生活が少し心地よくなったという。「刑務所の中ではあるけれど、全く違った環境なので自由を感じる」と話し、レストランの周りでは鉄格子があまり見えないことにも触れた。

 レストランで働く彼女らは、真新しいの黒のTシャツとエプロンを着用し、帯状のピンクの布で髪をまとめて作業に臨んでいた。受刑者150人のうち、厨房スタッフやウエートレスとして働いているのは15人。大半が殺人や麻薬取引の罪で収容された受刑者らで、2日間働くと刑期が1日短くなるのだという。

 店名の「インテルノ(El Interno)」は「インターン」を意味する。「ココナツミルク入りセビーチェ」に「シーフードライス」、肉にブラックソースを添えた郷土料理「ポスタ・カルタヘナ」といったメニューを30ドル(約3400円)で提供するレストランに、訪れる地元住民や観光客も興味深々だ。

 コロンビアの女優で、自身が代表を務める財団を通してレストランを支援しているジョハナ・バハモン(Johana Bahamon)さんは、「店に入る時、人々は刑務所の中で受刑者からサービスを受けること(ばかり)を考えるが、店を出る時には、才能豊かで勇敢な生身の人たちに出会えたことをうれしく思うのです」と語った。 (c)AFP/Santiago TORRADO