■何でもそろう街

 紛争の絶えないパレスチナ自治区の住民たちに、ラワビは別世界の生活を垣間見る機会を提供する。

 国際的なアパレルブランドが集うエリアでウインドーショッピングを楽しんでいた夫婦は、ヨルダン川西岸の他の場所では見たこともない建物や施設の数々に感嘆していた。「ここでは1か所ですべてがそろう。服もあるし、おもちゃもある。ラマラだったら、何か欲しいものがあるときには何か所も回らなければならない」

 ラワビに最初の住民が移り住んだのは2015年。集合住宅1戸当たりの価格は現在7万~18万ドル(約790万~2000万円)だ。主な購入層は湾岸諸国で働き富を得た裕福なパレスチナ人や、アラブ系イスラエル人となっている。

■国家建設への「大きな一歩」

 低木の茂みや砂地でしかなかった丘陵が、大通りに高級住宅や流行のカフェが並ぶ街となるまでの道のりは長く険しいものだった。政治的緊張を抱えたパレスチナ自治区内にあることを考慮すると、その苦難はなおさらのことだろう。

 事情を知る人たちによれば、イスラエル当局から道路1本の建設許可が下りるのにも数年を要したとされる。さらにプロジェクトの頓挫を狙い、イスラエルが主要な給水設備の接続をせずに放置し続けたこともあるという。

 だが、マルシ氏はそうした困難も越えてラワビのような都市を建設することが、自分たちの国家を求めるパレスチナの人々を後押しすると確信している。「ラワビが私たち自身の国家建設に向けた大きな一歩であることを、時が証明してくれるでしょう」 (c)AFP/Shatha Yaish