【11月22日 AFP】塩分濃度が非常に高い米カリフォルニア(California)州のモノ湖(Mono Lake)に生息するアルカリミギワバエ(学名:Ephydra hians)は、自ら作った気泡で体を包み込み、水面下に潜って捕食や産卵を行うことができる──。その特殊能力をめぐっては、米作家のマーク・トウェイン(Mark Twain)も称賛したほどだ。

 他の動物にとっては過酷なモノ湖の生息環境において、アルカリミギワバエがどのように適応し、その特徴を最大限に生かしているのかを明らかにしたとする研究論文が20日、査読学術誌の米科学アカデミー紀要(PNAS)で発表された。アルカリミギワバエは、モノ湖の生態系で不可欠な役割を担っている。

 モノ湖の塩分濃度は海水の約3倍。水はpH値が高く、また炭酸ナトリウムとホウ砂の濃度も非常に高い。触れた感じはまるで油のようだが、アルカリミギワバエは体をぬらさずに潜水することができる。

 モノ湖の水中には、魚や他の脊椎動物は生息していないため、ハエを捕食する動物は存在しない。そのためハエは、湖にすむ大量のバクテリアを誰にも邪魔されずに捕食することができる。ただし、それは水面までの話で、ハエは水面まで上昇すれば鳥やクモの格好の餌食となる。

「ハックルベリー・フィンの冒険(Adventures of Huckleberry Finn)」などの著作で知られるマーク・トウェインもまた、この特異な昆虫に驚嘆した一人だ。1872年に発表した旅行記「西部放浪記(Roughing It)」には──好きなだけハエを水中にとどめておくことができる…彼らはそれを苦にせず、誇りに思うだけ──といった記述が見られる。

 アルカリミギワバエの潜水の秘訣(ひけつ)は、大半の昆虫にすでに備わっている能力を高めているところにある。それは、体をびっしりと覆う、ろう状の物質でコーティングされた剛毛で水をはじく能力だ。

 このような性質は「疎水性」として知られている。例えばハナバチは疎水性のある羽を持っているため、霧雨の中でも飛行することができる。