【11月7日 AFP】五輪のモットーは、「より速く、より高く、より強く」だが、われわれが人体の限界に到達したとしたらどうなるだろう?

 もし運動競技の次なる進化が人工的あるいはドーピングによるものでないのであれば、短距離からマラソンに至るまでの陸上競技に関しては、記録が更新される時代は終わりに近づきつつあるかもしれない。一部の科学者らがそのような見解を示している。

 事実、2017年に開催された第16回世界陸上ロンドン大会(16th IAAF World Championships in Athletics London)では、女子50キロ競歩でのみ世界記録が更新された。同競技は今大会で初めて実施された。

 また、2016年のリオデジャネイロ五輪でも、陸上競技での世界記録の更新は、男子400メートルと女子1万メートルのわずか2種目にとどまった。

 仏スポーツ生物医学・疫学研究機関(IRMES)の専門家は、20世紀には記録更新で大きな向上がみられたが、近年では「多くの競技でその変化がほぼ皆無となりつつある」と指摘する。

 IRMESは2007年、現在のような形となった1896年以降の五輪大会の記録を分析。その結果、アスリートたちは、人間が持つ生理学上の限界99%に到達していることが分かったとしている。

 最近でも、信じられないような好記録は出ている。ケニアのエリウド・キプチョゲ(Eliud Kipchoge)選手は今年5月、マラソンで初めて2時間に迫るタイムをたたき出し、その名を不朽のものとする一歩手前まで近づいた。あと25秒早かったらキプチョゲ選手は伝説となっていたかもしれない。

 しかしこの記録は、米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)がスポンサーとなって行われた好条件下でのイベントで達成されたもので、公式には世界記録と認定されていない。現在の世界記録は、同じくケニアのデニス・キメット(Dennis Kimetto)選手が持つ2時間2分57秒だ。

 42.195キロを走る伝統的なマラソンをめぐっては、コーチや科学者らが長年、べストなパフォーマンスに最適な条件を模索してきた。

 これについて、スポーツ界での公平性の促進を目指す機関「Athletes for Transparency」の専門家は、理想的な気温約12度以外にも、ランナーが小柄であることといった「体格から生理学および生体力学的な基準に至るまで、競技には数十の要素がある」と話す。