■独自コンテンツのためのインキュベーター

 アナリストらによると、中国のACG市場は過去4年間で約2倍の規模に成長し、現在の利用者数は約3億人とまで言われている。これらの人々は、年間平均1700元(約2万9000円)をACG関連に費やしているとされ、今後、日本の市場規模に匹敵するとの見方もある。

 ビリビリでは、咬人猫さんのような動画以外にも、IT/技術、ファッション、エンタメ、ゲームの他、日本のアニメ関連の動画など、さまざまな種類のコンテンツが見られる。中には、中国共産党傘下の青年組織でエリート養成機関の「中国共産主義青年団(共青団、Communist Youth League of China)」による共産党をたたえる内容のものもある。70%はユーザーのオリジナルコンテンツだ。

 コンサルティング会社アイリサーチ(IResearch)のあるアナリストは、中国のオンラインACG産業について、現在は初期のごちゃごちゃとした段階にあるが、今後は中国独自のコンテンツを生み出すインキュベーターの役割を果たすようになるだろうと話す。

 テンセントは2012年、アニメや漫画を配信する「テンセント動漫(Tencent Comics)」を立ち上げた。現在はビリビリと組んでしてアニメ動画を制作している。他方でアリババも2015年、傘下の動画共有サイト「優酷土豆(Youku Tudou)」を通じ、ビリビリのライバルサイト「Acfun」に5000万ドル(約56億円)を出資した。

 市場分析会社CIコンサルティング(CI Consulting)は、中国のACG市場が数十億ドル規模へと急成長していると指摘する。

 ビリビリはユーザー向けのイベントを年次開催しているが、2013年にはわずか800人だった来場者が、今年夏のイベントでは10万人以上に膨れ上がった。多くは、咬人猫さんのような10代から20代前半の投稿者やファンで、コスプレヤーも少なくなかった。

 ミリタリー関連の情報をアニメーション動画を使って紹介するオンラインプログラム「軍武次位面」のゼン・ハン(Zeng Hang)氏は、国の経済的、技術的、社会的な急激な変化に直面している中国のミレニアル世代の間では、急速にバーチャル世界が現実世界に置き換わっていると話し、「上海の高層ビルに住む若者らは隣人の顔も知らない」と指摘する。

 また現代中国では多大なプレッシャーにさらされるため、ビリビリの軽めのコンテンツが救いになると説明し、「彼らはバーチャル世界での自らの存在が大切になり、そして好きなことにより多くを投じたいのだ」と続けた。(c)AFP/Albee ZHANG