【11月6日 AFP】ウィルバー・ロス(Wilbur Ross)米商務長官(79)が、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の近親者が経営権を保有する企業と取引している海運会社と、ビジネス上の利害関係を持っていることが5日、明らかになった。「パナマ文書(Panama Papers)」を手掛けた国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が新たに入手した内部文書を公表した。

「パラダイス文書(Paradise Papers)」と名付けられたこの文書をめぐっては、ロス長官が法に抵触する行為をしていたとの指摘はないが、ロシア企業との密接な関係が「利益相反」に相当する可能性や、ロシアの団体や実業家に対する米政府の経済制裁の効果を損なうのではないかとの疑問が生じている。

 世界の報道機関約100社が分析した内部文書には、投資家で大富豪のロス長官が複雑な海外投資の仕組みを通じて海運会社ナビゲーター・ホールディングス(Navigator Holdings)の株を31%保有していることが詳細に記されていた。公的文書によれば、ロス氏は商務長官に就任した際に保有株を減らしている。しかし、現在もロス氏の出資する未公開株ファンドは、ナビゲーター・ホールディングスの筆頭株主となっている。

 ナビゲーター・ホールディングスはロシアの石油化学大手シブール(Sibur)との取引で巨額の利益を上げている。シブールは、プーチン大統領の娘婿キリル・シャマロフ(Kirill Shamalov)氏と、プーチン大統領の友人でロシアによるクリミア(Crimea)併合をめぐって米政府の経済制裁対象となっている実業家ゲンナジー・ティムチェンコ(Gennady Timchenko)氏が経営権を保有している。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)によると、ロス氏は英領ケイマン諸島(Cayman Islands)に拠点を置く投資ファンドを通じてナビゲーター・ホールディングスに出資している。この未公開株ファンドへのロス長官の出資額は、公的文書によれば現在も200万~1000万ドル(約2億~11億円)相当に上っている。ロス長官はその他複数のタックスヘイブン(租税回避地)でも同様の投資を行っているとされる。

 商務省のジェームズ・ロッカス(James Rockas)報道官は「シブールとのビジネスに関するナビゲーターの決定に、ロス長官は関与していない。ナビゲーターは株式公開企業であり、当時も現在も制裁対象ではない」と説明。「長官は報道されているシブールの株主と会ったことは一度もなく、彼らの関係についても知らなかった」と述べた。(c)AFP/Issam AHMED