■歩けるようになっていた息子

 妻と子どもを預けてきた親戚の元へ戻るため、トルコに入国するまでに数週間かかった。8回目の挑戦でようやく国境を越えることができたが、妻たちはすでに立ち去っていた。

 妻のナフルさんが船乗りの父親と一緒にトルコからレスボス島へ渡ることができたのは、昨年11月だった。モハメドさんも親戚から妻たちはギリシャにいると聞いて、その後を追った。「レスボスへも3回渡ろうとしたが、トルコの沿岸警備隊にボートを押し戻された」

 モハメドさんはレスボスから近いサモス(Samos)島にたどり着き、そこで国連(UN)の難民支援機関の助けを得てギリシャ当局を説得するのに2か月近くかかった。そして8月、レスボス島で家族とようやく再会できた。

「2人は港で私を待っていた。息子は歩けるようになっていたんだ!」。モハメドさんの顔は輝いた。妻のナフルさんは「父親と再会してから、この子は笑ったり、走り回ったり、父親と遊んだりしている」と語った。

「まったく別の子どものようです」と、現地支援グループのソーシャルワーカーも言う。

 一家はギリシャへの亡命が認められ、まもなく首都アテネへ旅立つ。「おじがそこにいるので、職を探すつもりです」とモハメドさんは言った。「大事なことは、生きていることです」 (c)AFP/Anthi PAZIANOU