■自然の実験室

 11月末まで計画されているボーリング作業では、50ヘクタール中の異なる8か所で、地下1~120メートルのコアサンプルを20個採取する予定だ。

 ランバート氏によると、仏政府と欧州連合(EU)から資金供与を受けている総費用60万ユーロ(約8000万円)のこのプロジェクトは、長い冒険の始まりになる可能性を秘めているという。同氏は「野外の実験室と呼ぶにふさわしいことを証明するためのあらゆるものが、ここにある」とつぶやいた。

 プロジェクトをめぐり一部の科学者は、地球に飛来する隕石の形成過程や、それによって明らかになるかもしれない宇宙空間での隕石の進化など、未解決の謎の解明が進むことを望んでいる。

 他方では、地球上の生命の発生や、生命の基本構成要素のうちのどれが宇宙からもたらされたかなど、謎を解くために必要な手がかりとなる化学的痕跡の発見にも期待が寄せられている。

 また地質学者らは、これほどまでに地殻を激変させた衝撃において、岩石層内に保持されていた水がどの程度解放された可能性があるのかに関心を抱いており、その一方で古生物学者らは、生命を大量に死滅させた可能性のある衝突事象が、同時にどれだけ新たな生物形態が出現するための状況を作り出すことに寄与したのかを調べたいとしている。

 プパール氏は「これは生命の秘密が足の下にあるというわけではない」と話す。「だが、2億年前にここで起きたことを研究すれば多くのことが分かる可能性がある」と付け加えた。また同氏によると、ロシュシュアールの岩石コアについては、固定、ラベル貼付、データ記録などの作業が終了すればすぐに世界中の研究者が利用できるようになる見込みだという。

 フランス国立科学研究センター(CNRS)は「ロシュシュアールの隕石痕が国内外の研究に恩恵をもたらす自然の実験室となることを望む」としている。(c)AFP/Julie CARNIS