【11月4日 東方新報】中国・北京市(Beijing)石景山区(Shijingshan)にある北京大学首鋼医院(Peking University Shougang Hospital)ホスピスセンターには、10人以上の高齢者が入院している。おそらくここで人生の最期を迎える人たちだ。同ホスピスセンターは2017年3月、中国で初めて設立された。医師4人とヘルパー10人、栄養士のほか、伝統療法の専門医、リハビリマッサージ師や心理カウンセラーなどがおり、治療や延命を行わず、患者の苦痛の軽減と生活の質の改善を目的とし、すべての生命を尊重して送り出している。

 76歳の薛靈芸(Xue Lingyi)さんは肺がんを患って、長期治療を行っていたが、今年になり医師から帰宅を勧められたという。高齢で糖尿病も患っているため、手術はできないというのが理由だという。

 薛さんの娘は、「治療をしていた頃、母の体は管だらけで身動きが取れない状態だった。母はよくつらいと漏らしていました」という。本人の同意のもと、ホスピスセンターに移ってきた。

 薛さんが暮らす部屋にはベッドが二つ、テーブルが一つとトイレがついている。南向きの窓の外はベランダで、籐の椅子と小さなテーブルが置いてある。一般の中国の病院とは異なり、センターでは患者と家族が一緒に暮らすことができるため、娘も母に付き添い、この部屋で暮らしている。

 薛さんは毎朝、午前7時に起きる。センターのヘルパーに体を拭いてもらうと、ベランダに連れて行ってもらい、そこで朝食をとる。食後は、娘との会話を楽しむ。午後になると少し散歩をし、夕食後には足湯をしたり、テレビを見たりする。

 83歳の霍光(Huo Guang)さんは、前立腺がんを患って3年がたち、骨への転移が見つかった。かつて入院していた病院では、同じ病室で隣のベッドに横たわっていた63歳の患者は、亡くなる直前まで全身管だらけで、霍さんは「こんなの拷問じゃないか」と感じたという。妻は体が悪いし、息子は仕事で忙しい。霍さんは自分でこのセンターを調べ、10月中旬に移って来たばかりだという。

 霍さんはまだ自力で歩くこともできるし、着替えや食事なども介助を必要としない。息子に買ってもらったタブレット端末でニュースを見たり、病気について調べたりして過ごすという。霍さんは「これがホスピスというものか。痛くなったらいつでも治してもらえるし、それ以外は一人の時間を持てる」と満足げに話す。ヘルパーは霍さんが一人で過ごすのが好きだと知っており、点滴の時間以外は霍さんの一人の時間を邪魔しないようにしているという。