■「若い共和国」の着こなし

 服装はこの現実をいや応なく反映している。目抜き通りの大型広告では、入れ子人形のマトリョーシカなど昔からのロシアの定番デザインと、ミリタリーファッションのポスターが肩を並べている。

 モロゾワさんが提案するファッションで最も目を引くのが「若き共和国」というドレス。白い刺しゅうに覆われたドレスに、ドネツクの旗の色をした長い袖があしらわれている。「私たちは若い国に住んでいる。育ち始めたばかりの国です」。地元デザイナーの作品を集めた野外の特設展で、モロゾワさんは来場した人々に説明していた。そして鎌と槌のモチーフがあしらわれた別のドレスについては、「みんなソビエト連邦生まれだから」と語った。

ウクライナのドネツクで開催された野外ファッションショーで地元デザイナーが手がけたドレスと写真を撮る女性(2017年8月26日撮影)。(c)AFP/Aleksey FILIPPOV

■デザインに反映する紛争

 しかし、「ロシア風」が国際的な有名ブランドに取って代わっていることを快く思わない人もいる。

 語学学校の元学生で現在無職のエレーナさん(27)は、ドネツクにあるショッピングモールを何も買わずに去った。彼女は親ロシア派勢力による仕返しを恐れ、苗字は明かさずに取材に応じた。「こういったミリタリールックや愛国風のモチーフ、マトリョーシカや『ロシア風』の刺しゅう……どれも品質の良いものではない。どれも好きじゃない」と話す。「需要がないことと戦争のせいで、良い服がドネツクから追いやられてしまった」

 一時は100万人近くが暮らしていた街は今、地元の業者以外はトルコや中国製の安い模造品であふれかえっている。

 デザイナーのタチアナ・プロチェンコ(Tatyana Protchenko)さんの最新スタイルは、戦闘によって毎日のように命が奪われていった2年前の日々にインスパイアされている。「木々が生い茂って暖かく美しい春だったのに、そこら中で砲弾が爆発していて、人々が死んでいった」と振り返る。「戦争は私のコレクションに深く影響を与えた」