中国 無痛分娩の是非めぐり大論争 産婦の自殺受け波紋
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■出産も格差の時代
中国のソーシャルメディア(SNS)や産科医の専門家会議などで議論になっているのは、こうしたペインコントロールの技術を、特に民間病院に金もうけの小道具に利用されることなくどうすれば普及させていけるのかという問題だ。一方、公立病院の場合は、ペインコントロールを用いた医学的介入は政府の規制によって割増料金を請求できないため、大半の医療機関が患者側にこうした選択肢を積極的に提供しない現状を生んでいる。
「2003年に息子を出産したとき、無痛分娩、つまり硬膜外鎮痛に3000元(約5万円)払いましたが、料金はこの14年間であまり変わっていません」と、北京の国営出版社社員のバオ・ヤンさんは話す。しかしインターネットで検索したところ、いくつかの民間病院が同じ処置に5万〜7万元(約85万〜120万円)の料金を示す広告を出していた。
汕頭大学医学院のチェン医師は、ペインコントロールは、すでに資金不足の公立病院への負担を上乗せするだけだと指摘する。「正直なところ、私たちの病院では推奨していません。ほとんど民間病院が金もうけをするための宣伝材料ですよ」
前述のバオさんの経験からも分かる通り、この処置は「無痛」だとうたわれてはいるが、実際には妊婦にとって想定外のことが多数起こる可能性がある。硬膜外麻酔では、腰から脊髄周辺に少量の麻酔薬が注入されるが、麻酔薬は骨盤部の痛みを和らげる程度のもので、母親が胎児を押し出すだけの力は残されている。
バオさんは、「おそらく、私の場合は医師が注射針を刺した位置が正しくなかったのでしょう。麻酔は20分前後しか効かず、それからおよそ9時間、大変な痛みを味わいました」と語る。「体のどこかにずっと痛みがあったという妊婦もいますし、無感覚になったという人もいます。足の感覚はなくなったけれど、腹部に痛みを感じたという人もいます」
陝西省(Shaanxi)で26歳の妊婦が分娩中に自殺した後、中国では痛みの少ない出産方法を選ぶ人が急増した。しかし、ウェイボー(微博、Weibo)のあるコメントにはこう書かれていた。「今や出産にすら格差がある。余裕がある者は米国に行って無痛分娩を行い、片や、そうでない者は歯をくいしばって叫ぶのをこらえなければならない」(c)財新/JCM/AFPBB News
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