■10人の「掃地僧」──達摩院は「盟主」となれるか 

 金氏の小説『天竜八部』の中で、「掃地僧」は少林寺に隠居していた少林武術を極めた人物として描かれている。

「達摩院」の設立にあたって、10人の学術顧問委員会メンバーが発表された。人工知能(AI)の権威マイケル・ジョーダン(Michael Jordan)氏や、ヒトゲノム計画(Human Genome Project)のリーダー的存在であるジョージ・チャーチ(George Church)氏なども含まれ、最高学術顧問機関として研究内容や重要発展項目、重要プロジェクトと目標などについてアドバイスをする。将来は委員会メンバーもさらに増えるであろう。

 マー会長は今後3年間で達摩院に1000億元(約1兆7036億円)の技術研究開発費用を投資すると発表したが、この1000億元は単なる初期運用資金で、世界の人材を集めるために使われる。将来は「達摩院」は自立し、「托鉢」(たくはつ)するようになるという。

 問題は、この「達摩院」がどのようにしてインテルやマイクロソフト、IBMを抜き去って盟主となるのか、である。

 ライバル社の一つであるマイクロソフトは現在、七つの研究院を所有している。米国、中国、インドなどに1000人を超える科学者やエンジニア、デザイナーを抱え、中には数々の名誉ある賞に輝いた人物もいる。1991年にマイクロソフト・レドモンド研究院を設立してから26年間で、23000本以上もの論文を発表している。

 同研究院は主に、アルゴリズムやコンピュータービジョンを含む18分野で研究開発を進めている。これらの研究はユーザーが思いつくほぼすべての分野を網羅しており、個人の健康からエネルギー、環境など世界の問題におよぶ。

 しかし、先進的な科学研究には膨大な資金が必要だ。マイクロソフトのような大企業が研究院を運営する場合も例外ではない。「達摩院」はプラットフォームを通じて多くの産業と結びつき、テクノロジーの分野で主導的地位を得るだけでなく、同時に「自給自足」の実現を目標としている。

 アリババグループのCTO(最高技術責任者)で「達摩院」主任院長の張建鋒(Zhang Jianfeng)氏は、「『達摩院』はプラットフォームを提供することでたくさんの人材を集め、まずは基礎を固める。さらにアリババが提供するクラウドサービスのアリクラウド(Ali Cloud)を通じてもっと多くの顧客へサービスを提供し、たくさんの業界とつながることを目指す」と話している。(c)CNS/JCM/AFPBB News