【10月4日 CNS】中国・湖南省(Hunan)長沙市(Changsha)にある長沙海底世界(Changsha Sea World)の「極地海洋館」で9月22日、中国生まれのベルーガ(Delphinapterus leucas)の「お姫様」が1歳の誕生日を迎え、にぎやかな祝福を受けた。中国で唯一の、人工飼育環境下で生まれたベルーガだ。

 大型ほ乳類のベルーガは、クジラ科の海洋生物で、主に北極海域に生息する。生存の環境条件がかなり厳しく、すでに国際自然保護連合(IUCN)が絶滅の恐れのある野生動物リスト「レッドリスト(Red List)」の中に入っており、準絶滅危惧種だ。希少な極地海洋動物で、人間の手による人工繁殖の難易度が特に高いとされている。

 長沙海底世界は2010年、中国・中南地区最大の極地館となり、2匹のベルーガ「卓雅(Zhuo Ya)」「舒拉(Shu La)」を迎え入れた。2016年9月に卓雅が元気な「お姫様」を出産した。当時の長沙海底世界は人工繁殖や育成の経験がまったく無く、模索しながらベルーガの赤ちゃんの育成方法と健康を維持する方法を見つけ出した。

「大まかな統計ですが、アメリカ、カナダ、スペインでのベルーガの出産・分娩の事例の報道はありました」と、中国農業部長江流域漁業漁政管理執務室の衣艶栄(Yi Yanrong)部長は語る。完全な人工育成の環境下で受胎、順調な生育、幼体の生存、人工保育、健康的な成長のいくつかの段階を通して、長沙海底世界は人工飼育環境下での繁殖という難題を克服し、それまで空白だったベルーガの人工飼育・繁殖に関する新たな情報を追加できた。

「繁殖で最も必要なのは、生息環境、母体の体力とそれを維持する栄養の補給、幼体の人口授乳などの環境で、私たちは基本的に全天候下におき、途切れることなく観察し改善に努めています」と、長沙海底世界のカク暁波(Hao Xiaobo)副総理は話す。例えば、幼体の授乳については参考にできる処方が全く無く、当時のスタッフはうまく授乳できずに、24時間態勢で継続的に給餌量を確保していた。また、ベルーガの恐怖感や排斥感をコントロールする事で、徐々に給餌方法を受け入れさせ、哺乳瓶にも慣れさせることができた。

 現在は、極地海洋館のイルカプールで過ごす赤ちゃんの体長はすでに3メートル近くになり、皮膚も生まれた直後と比べて薄い灰色へ変化しつつあり、大人になるころには両親と同じように真っ白になっていくという。

 希少海洋動物の知識を広く普及させるため、また野生水生動物を保護に対する啓発のためにも、ベルーガ、イルカなどの「海の妖精」の保護をもっと進めなければならない。ベルーガの赤ちゃんが誕生日を迎えた日、長沙海底世界では、クジラやイルカを保護するボランティアを組織させた。そして実際の行動で国民に野生水生動物の保護に注目してもらうえるよう提唱していく。

 極地海洋館では今年7月、2頭のイルカが相次いで子供を出産しており、健康状態もとても良い。もう一頭の雌イルカも出産前だといい、優れた繁殖活動の成果が数多く上がっている。ベルーガやイルカの赤ちゃんの誕生にともない、長沙海底世界のスタッフも徐々に増員しており、ベルーガやイルカの赤ちゃんの成長も繁殖・保護のための貴重な蓄積となっている。(c)CNS/JCM/AFPBB News