■自殺した三つ星シェフを思い浮かべる

 約10年前に父親のミシェル・ブラス(Michel Bras)から店を引き継いだセバスティアン・ブラス氏は、他の「シェフなら全員」皆そうだろうが、2003年に自殺したベルナール・ロワゾー(Bernard Loiseau)氏のことを時々思い浮かべずにはいられなかったと語った。

 ロワゾー氏は、ミシュランの三つ星を失うのではないかとのうわさを苦に命を絶ったとみられている。だが、ブラス氏は「私自身はそういった気持ちにはなっていない」と急いで付け加えた。

 ミシュランで星を獲得した名門レストランによる過酷な競争の世界と決別したシェフは、これまでにもいる。過去にいくつかのレストランが、三つ星の栄誉を手放している。

 2005年には、フランス料理の新潮流「ヌーベル・キュイジーヌ(Nouvelle Cuisine)」の創始者の一人、故アラン・サンドランス(Alain Senderens)氏が、客はゴージャス過ぎる料理に嫌気が差しているとして星を返上し、フランス料理界に衝撃を与えた。サンドランス氏は後に別の店名で、旧店舗の値段よりずっと安くシンプルなメニューを提供するレストランを開店した。

 ドルラン・クローゼル氏は、一流シェフが耐えている重圧について聞かれると、トップアスリートになぞらえて「卓越したものであるためには、修練とハードワークが要求される」と語った。「私たちはうちの店のシェフたちにこう言っている。『ミシュランガイドのために働いているんじゃない。客のためだ』」(c)AFP/Clare BYRNE and Remy ZAKA