【8月28日AFP】シーラ・バーテルズ(Sheila Bartels)さん(55)は鎮痛剤510錠の処方箋を手にオクラホマ(Oklahoma)州にある主治医の診療所を後にした──同日後刻、彼女はこの鎮痛薬を過剰摂取して死亡した。

 バーテルズさんの主治医だったレーガン・ニコルス(Regan Nichols)被告は、鎮痛薬「オキシコンチン(Oxycontin)」などの過剰摂取により死亡した患者5人に対する第二級殺人の罪5件に問われている。同被告が患者らに処方したオピオイド鎮痛薬は、長期間服用すると依存症に陥る危険性が高い。

 カリフォルニア(California)州スタンフォード大学(Stanford University)のデービッド・クラーク(David Clark)教授(麻酔学)は、「医師らには『オピオイド・クライシス(鎮痛剤危機)』に対する大きな責任がある」と語る。

 クラーク教授は、医師など医療供給者や監督機関に対する新しいトレーニングとガイドラインを作成した米政府主催のオピオイド・クライシス研究委員会のメンバーでもある。

 米国には現在、鎮痛剤依存症患者が200万人いるとみられている。依存症患者の多くは、処方箋が切れた後に鎮痛剤の違法入手を試みるとされるが、中には切羽詰まってメキシコの麻薬密輸組織が米国に持ち込んだ覚せい剤や合成鎮痛剤に手を出す人もいるという。

 鎮痛剤の過剰摂取で死亡する米国人の数は1日平均90人に上る。1999年以降では、18万人以上が命を落としている。この中には、強力な鎮痛剤フェンタニル(fentanyl)の過剰摂取で死亡した米人気ポップ歌手プリンス(Prince)さんも含まれている。死去当時、彼はまだ57歳だった。

 オピオイド鎮痛剤をめぐっては、米国の医師による処方が世界で最も多く、同国内の全ての成人を治療するのに十分な量ともされている。