■共通の祖先

 バレット氏と英ケンブリッジ大学(University of Cambridge)のマシュー・バロン(Matthew Baron)氏は、チレサウルスが恐竜の系統樹のどこに位置づけられるかを確認するために、初期の恐竜の解剖学的特徴を450点以上分析した。そして分析結果は、直観を裏づけるものだった。

「チレサウルスは、草食性の奇妙な初期の獣脚竜ではなく、鳥盤類から分岐した奇妙な草食動物だったことが明確になった」とバレット氏は述べた。

 20世紀の大半を通じて、獣脚類は3つ目の主要な進化系統である竜脚類とより近い類縁関係にあるという点で、専門家らの意見は一致していた。竜脚類には、長い首を持つ恐竜のディプロドクスやブラキオサウルスなどが含まれる。

 だが、どっちつかずで得体の知れなかったチレサウルスは、獣脚類に分類される恐ろしい殺し屋たちが実際には、おとなしい鳥盤類の風変わりな恐竜グループとの間により大きな類似性を持っていたことを示している。

 この大胆な仮説は、バレット氏とバロン氏が3月に他の共同研究者らとともに英科学誌ネイチャー(Nature)に発表した画期的な研究論文の中で提唱されたものだ。

「われわれが行った分類の再編成は、鳥盤類と獣脚類をこれまでよりも、はるかに近くに位置づけるもので、新種恐竜チレサウルスはこの関係性を強固につなげる助けとなる」とバレット氏は説明する。「これら2つの分類グループにみられる特徴を併せ持つチレサウルスのおかげで、この再編成が正しかったというわれわれの確信はさらに深まっている」

 恐竜が最初に登場したのは約2億2800万年前。その恐竜の時代の到来からそれほど経っていない約2億2500万年前には、鳥盤類と獣脚類が共通の祖先を持っていたとする説を、今回の最新研究結果は後押ししている。(c)AFP/Marlowe HOOD