■「劇的な効果」

 昨年1月に開設したこのメモリールームは、平日の朝食から夕食までの間に開放している。かつて東独で、西側のメーカーのコーヒーやチョコレートなどの高級品を扱っていた「インターショップ(Intershop)」という店の看板の小さなレプリカの前に、歩行器や車いすが並ぶ。

 東独では至る所に見られたホーネッカーの写真や、ひげを蓄えたカール・マルクス(Karl Marx)の肖像が描かれた東独マルクの模造紙幣が入っている箱が置かれている。レコードプレーヤーから流れる明るい懐メロを、皆でそろって口ずさむ。

 昔懐かしい品々に浸ることで、入所者たちの気分や動作能力を上向かせる「劇的な効果」がみられると、ギュンター・ボルフラム(Gunter Wolfram)所長(48)は言う。「ある時代の品々が非常に強い感情を呼び起こす。そういう感情が治療の鍵になり得るという意味で、われわれは強い関心を寄せている」

 ボルフラム所長によると、「無気力だった人が突然、自分でロールパンにバターを塗れるようになったり、飲食量が増えたり、自分でトイレに行くようになったり、前よりもフレンドリーで周りに関心を持つようになったりする」という。

 東独時代の古い品物はこれまで、インターネット競売大手イーベイ(eBay)やフリーマーケットで探していたが、取り組みが知られるようになった最近では、寄贈品も届いている。