■マジカル・ニグロとは違う

 現代英語では「ニグロ」という言葉は、人種差別的で時代錯誤だと考えられている。さらに潜在的な人種差別意識を匂わす「マジカル・ニグロ」という言葉の発想は故意に挑発的だ。

「マジカル・ニグロ」という言葉を批判し、広く知らしめたのはスパイク・リー(Spike Lee)監督だ。

 リー監督は2001年に『グリーンマイル(The Green Mile)』(1991年)や『バガー・ヴァンスの伝説(The Legend of Bagger Vance)』(2000年)といった映画を批判する。同監督は後者の時代背景に触れながら、「黒人が手当たり次第リンチされているっていう時に(バガー・ヴァンスは)マット・デイモン(Matt Damon)のゴルフ・スイングの上達を気にしているんだ」と皮肉たっぷりに述べ、黒人のステレオタイプが用いられ続けていることにいら立ちを示した。

「マジカル・ニグロ」が登場する最も新しい作品は、米ABCテレビで次のシーズンから始まるコメディドラマ「Kevin (Probably) Saves the World」だ。番組では、米国人俳優ジェイソン・リッター(Jason Ritter)が演じる自分のことしか眼中にない「負け組」の主人公「ケビン」が、アフリカ系米国人女優キンバリー・エイベア・グレゴリー(Kimberly Hebert Gregory)演じる守護天使の導きでチャンスを手にするストーリーが展開する。

 ただし、グレゴリーが演じる役について共同プロデューサーのタラ・バターズ(Tara Butters)氏は、単なる白人の主人公のガイド役とは違うと話す。「放送回を重ねるにつれ、このキャラクター自身が気付くのは、自分がケビンを助けるためにそこにいるだけではなく、ケビンも彼女を助けているという点だ。この2人の登場人物は非常に面白い関係を作り上げることになる」

 またグレゴリー本人も、「そのような見方があるのは分かっている。しかし自分が演じるキャラクターは(いわゆる)天使なんかではなく、ダメなところだらけ。優しくもない。彼女は天使の様にはふるまわないし、天使のような口調でもない」と述べ、この役がマジカル・ニグロには当てはまらないと考える理由を述べた。(c)AFP/Frankie TAGGART