【8月3日 AFP】スペイン1部リーグ、FCバルセロナ(FC Barcelona)のネイマール(Neymar da Silva Santos Junior)が、史上最高額の2億2200万ユーロ(約288億円)でフランス・リーグ1のパリ・サンジェルマン(Paris Saint-GermainPSG)に移籍することが確実な見通しとなった。

 スペインの強豪バルセロナは、ネイマールの退団希望を認識した上で、契約解除金を支払うよう選手側に求めている。ここではスペインの契約解除金の仕組みについて、設定される理由や、契約解除までの流れを解説する。

■設定される理由

 契約解除金の設定は義務ではないが、現在では設定するのがごく当たり前となっている。それは1985年に導入された法律に理由があり、解除金条項のない契約をクラブと結んでいる選手は、契約を一方的に破棄し、裁判所の定める補償金を請求することが認められている。

 契約交渉が長期化する要因になることもあるが、解除金の設定はどちらにとってもメリットがある。契約が成立しなければ、選手側は何か月、場合によっては何年もプレーできなくなり、それは選手としても望ましい状況ではない。

 ネイマールの場合、解除金の額は時期によって増額する契約になっている。2016年に更新したバルセロナとの契約では、最初の解除金は2億ユーロだが、2017年7月1日から額は2億2200万ユーロに増え、契約3年目を迎えれば2億5000万ユーロとなっていた。

■解除の方法

 スペインの契約解除金と、他の有力リーグの契約解除金との最大の違いは、解除までの流れにある。スペインでは、獲得側のクラブが放出側のクラブに解除金を直接支払うのではなく、選手本人が自分自身を買い上げるという形を取る。

 契約を破棄したい選手は、まず契約解除に必要な額をリーグに納め、続けてリーグがそのお金を売却側のクラブに送付する。獲得側のクラブは、前もって選手に契約解除金を渡しておくことが必要になる。

■課税の仕組み

 移籍をめぐる税金は、最近大きく仕組みが変わった。獲得側のクラブから選手へ事前に支払われる額は、2016年まで所得税の対象だったため、額面上の金額に48パーセントの税金が上乗せされていたが、現在では免税されている。そのため、移籍に必要な金額は以前より格段に安くなり、解除金を支払って移籍する選手が急増している。

■恩恵を受けるクラブ

 これまで、制度はビッグクラブ有利にはたらいてきた。強豪クラブは手元のスター選手に非現実的な額の「値段」を設定し、資金力の劣るクラブからそこそこの額で優秀な選手を集めることができた。

 例えば、レアル・マドリード(Real Madrid)はクリスティアーノ・ロナウド(Cristiano Ronaldo)の契約解除金を10億ユーロ(約1310億円)に設定している。フロレンティノ・ペレス(Florentino Perez)会長はロナウドに移籍の可能性が浮上した2013年、「われわれは選手にたくさんの給料を支払い、法外な額の解除金を設定する」と話していた。

 バルセロナの場合も、本来であればこれだけの高額な解除金は、‎引き抜きの魔の手からネイマールを守る手段になるはずだった。ところが移籍市場の急激なインフレと、カタールを後ろ盾にしたPSGの底知れない資金力に、クラブは凍りつくことになった。(c)AFP/Kieran CANNING