【8月1日 AFP】米大リーグ(MLB)、シカゴ・カブス(Chicago Cubs)のファンで、2003年のナ・リーグ優勝決定シリーズで捕球を妨害をして社会的制裁を受けたスティーブ・バートマン(Steve Bartman)氏が31日、同球団から優勝リングを授与された。

 フロリダ・マーリンズ(Florida Marlins、現マイアミ・マーリンズ〈Miami Marlins〉)との同シリーズ第6戦の8回表、カブスの本拠地リグレー・フィールド(Wrigley Field)のスタンド最前列にいたバートマン氏は、ファウルボールを捕球しようとしていたモイゼス・アルー(Moises Alou)外野手を妨害して以降、カブスにかけられた「呪い」の一つとして長年嫌われることになった。

 3勝2敗でシリーズ制覇に王手をかけていたカブスは、この試合を3-0でリードしていたものの、この回に大量8点を奪われて3-8で敗れた揚げ句、第7戦でマーリンズに優勝をさらわれてしまい、この話は米スポーツ史に語り継がれる伝説となってしまった。

 カブスは昨年のワールドシリーズ第7戦でクリーブランド・インディアンス(Cleveland Indians)を下し、北米スポーツ史上では最長となる1908年以来の優勝を飾って「呪い」に終止符を打った。そして、14年前のプレーオフで犯した自らの行為よって不遇の扱いを受けてきたバートマン氏に報いる機会が巡ってきた。

 カブスのオーナーであるトム・リケッツ(Tom Ricketts)氏のオフィスでリングを受け取ったバートマン氏は声明で、「ほっとしていますし、2003年のファウルボール事件で生じた私や家族にまつわる長い物語が、これでようやく終わることを望んでいます」と述べた。

「自分がこのような栄誉に値するとは思っていませんが、正式なシカゴ・カブスの2016年ワールドシリーズ優勝リングを受け取って、心から感動していると同時に深く感謝しています。この歴史的な重要性を十分に認識し、あらゆるレベルでリングが示す象徴的な意味についても尊重しています。家族と私で代々大切にしていくつもりです」

 一方、リケッツ氏は「われわれが待望のワールドシリーズ制覇を成し遂げるまで、長い間ずっと尾を引いていた不幸な出来事が、これで終わることを望んでいる」とコメントした。

 バートマン氏はまた、自身が座っていたシートが長い物語の思い出の場所としてちょっとした名所となっているリグレー・フィールド内も案内された。

 問題の事件では、バートマン氏がマーリンズのルイス・カスティーヨ(Luis Castillo)のファウルボールに手を伸ばし、アルー外野手が体を伸ばして捕球しようとしていたのに気づかずにこれを妨害し、貴重な一死をふいになってしまった。

 バートマン氏に妨害されてボールがグラブからはじかれた後、アルー外野手は悔しさをあらわにしてファンに向かって叫んでいた。

 試合はこのあとカブスが崩れてしまい、バートマン氏が警備員に連れられて球場を後にした際には、怒ったファンが同氏にビールを投げつけた。警察に保護されて自宅へ戻ったバートマン氏は、電話番号を変えて、その後は公の場に出るのを拒否した。(c)AFP