■高まる脅威

 冷戦時代のニューヨーク州知事、故ネルソン・ロックフェラー(Nelson Rockefeller)氏は核シェルターの建設を提唱し、在任中に数千か所を設置。1963年までに軍が核シェルターとして確認した建物は1万7448棟余りに及んだ。現在も数十か所で残っているが、多くの住民はその存在の意味を知らない。

 デービッドさんが住む建物の地下にあった核シェルターは、現在は改装され洗濯室になっているという。今では通りに面して何か所か窓も設置され、以前の防衛機能の面影はほとんどない。

 近年、ニューヨークでは災害対応の訓練に重きが置かれている。4月に行われる大規模訓練「ゴッサム・シールド(Gotham Shield)」などではスポーツスタジアムに野戦病院も設置される。しかしこうした訓練は、スーツケース型核爆弾や放射性物質を含んだいわゆる「汚い爆弾」を想定したもので、破壊力が圧倒的なICBMは念頭に置いていない。

 コロンビア大学(Columbia University)地球研究所(The Earth Institute)にある全米災害準備センター(National Center for Disaster Preparedness)のジェフリー・シュレーゲルミルク(Jeffrey Schlegelmilch)副所長は「直接的な核攻撃に限らなくても、全米で完璧な準備をしている、あるいは取らなければいけない対応が揃っている都市や地域はないと思う」と指摘した上で、現時点で最優先すべきなのは核攻撃に対する意識啓発を強化することだと強調している。(c)AFP/Thomas URBAIN