【7月29日 CNS】ブダペスト(Budapest)で開催中の第17回世界水泳選手権(17th FINA World Championships)で競泳決勝が23日に行われ、激しい争いが展開された。男子400メートル自由形決勝で、中国水泳チームキャプテンの孫楊(Yang Sun、ソン・ヨウ)は3分41秒38のシーズン最高成績で優勝し、3連覇を果たした。彼の選手生活を振り返ると、3連覇の栄光の影には、規律違反やナショナルチーム追放などといった暗い一面もあった。今ではアーロン・ピアソル(Aaron Peirsol、アメリカ水泳名選手)やグラント・ハケット(Grant Hackett、オーストラリア元水泳選手)を超え、世界選手権で8つの金メダルを獲得、水泳競技史上に名を残すほどの選手になった。「問題児」から世界選手権チャンピオン「ビッグスリー」になるまでの成長は、孫楊のまさに自己挑戦の道のりだった。

 ブダペストで歴史をつくった孫楊だが、4年前には中国スポーツ界公認の「問題児」だった。2013年にスペイン・バルセロナ(Barcelona)で行われた第15回世界水泳選手権(15th FINA World Championships)で金メダルを3つ獲得し、感動の涙であふれた受賞画面がまだ人々の記憶に新しいうちに、無免許運転をしてバスと接触事故を起こし、公安機関より罰金2000元(約3万4000円)と行政拘留7日の処罰を受けた。

 さらに、休暇後に時間通りチームに戻らなかったり、長期間海外旅行に行ったり、「行方不明」になったり。また、監督らの指導や勧めを聞かないと報道された。結局、「新浪微博(Sina Weibo)」で「謝罪」したものの、浙江省(Zhejiang)体育職業技術学院からは練習参加の停止、試合出場停止処分、中国国家体育総局競泳管理センターからも国内外試合資格の取り消し、ナショナルチーム除名の処分も言い渡された。

 孫楊にとって、2013年は人生の中で一番忘れられない年だった。2016年リオデジャネイロ五輪を控えた孫楊はオーストラリアで合宿中に右足を骨折。5月末、最終調整のためアメリカへ向かう直前の再検査で、回復したはずの第5中足骨が完治していない上、第4中足骨にも疲労骨折が見つかった。怪我に悩まされたままリオデジャネイロへ旅立ったが、最終的に、孫楊は男子400メートル自由形決勝で、わずか0.13秒の差でホートン(Mark Horton、オーストラリア)に及ばず、銀メダル。チャンピオンのホートンは試合後、孫楊を「ドラッグ・チート(薬物使用の詐欺師)」とからかい、物議を醸した。そのためか、孫楊はインタビューで思わず泣き崩れ、人々の涙を誘った。その後の200メートル自由形で優勝しホートンに「反撃」したが、彼は自分の得意種目1500メートル自由形では決勝に残ることすらできなかった。

 今大会が始まる前、孫楊はずっと香港(Hong Kong)でオーストラリアの名監督デニス・コッテレル(Denis Cotterell)の下、強化練習を行っていた。スタートとターンの技術も、今回練習の中でずいぶんと進歩した。孫楊はメディア取材の中で、今季の練習は「鬼」のように厳しく、「練習時に泣いたこともある」と漏らした。

 男子400メートル自由形は今回の世界選手権での最初の競技で、練習の成果を発揮する最初の試練でもあった。試合前、ライバルであるホートンに再び、「(孫楊は)薬物使用者」だから競技は不公平だ、と「口撃」された。孫楊に心理的プレッシャーを与えるためだったと思われる。 

 最終的に、孫楊は飛び抜けて速い3分41秒38の好成績で優勝、2位のホートンを2秒余りリードした。授賞式で再び男泣きした孫楊だったが、2度も悪口を言い放ったホートンに対しては、寛大な態度で握手を交わした。

 中国ナショナル水泳チームキャプテンとして、孫楊はチームメイトをリードしながら練習に励んでいる。世界選手権400メートル、800メートル自由形3連覇を実現し、8つの金メダルを獲得、マイケル・フェルプス(Michael Phelps)やライアン・ロクテ(Ryan Lochte)に次ぐ世界水泳選手権メダル獲得者となった。だが、孫楊にとってこれは始まりに過ぎない。今大会で残る3種目で、金メダルをかけて戦う。(c)CNS/JCM/AFPBB News