【7月11日 AFP】ウミグモは、大半の生物のように活発に鼓動する心臓の力で血液と酸素を体全体に巡らせるのではなく、ポンプのような働きをする腸を用いているとの研究結果が10日、発表された。

 米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された論文によると、この腸はウミグモのひょろ長い体全体に伸びているという。

 論文の筆頭執筆者で、米モンタナ大学(University of Montana)のアーサー・ウッズ(H. Arthur Woods)氏は「単一の体腔内にすべて収容された、体の中央に位置する腸を持つ人間とは異なり、ウミグモの腸は何度も枝分かれしており、腸管の一部がすべての足の先端部にまで伸びている」と話す。

 ウッズ氏は、ウミグモの心臓の鼓動が弱く、体の中心部にしか血液を巡らせていないことに注目した。一方、腸は全体でまとまりのある強い収縮の波を示していた。

「蠕動(ぜんどう)」と呼ばれるこのプロセスは人体でも起きるもので、筋肉の不随意的な収縮と弛緩を伴う。人体の蠕動は、消化を助け、腸の内容物を混ぜ合わせて腸管内を移動させることを目的としている。

 一方、ウミグモの体内で発生する蠕動波は、消化に必要と考えられるものよりはるかに強い。十分な酸素を体全体に送り込まなければならない役割もあるからだ。

「今回の研究結果は、すべての動物が遭遇する問題への解決策が持つ広大な進化的多様性を浮き彫りにしている」と、論文は述べている。

 今後の化石の発見が、ウミグモの奇妙な生き残り戦略の起源に関する理解の深化に役立つ可能性がある。(c)AFP