■人口の6割は短期滞在の「流動的」な住民

 バルセロナ市によると、2006年には2万7470人だったゴシック地区の人口は、2015年には1万5624人まで減っている。現在の人口の63%は観光客や短期滞在の「流動的」な住民たちだ。

 エアビーアンドビー(Airbnb)のような民泊仲介サービスの登場により、問題は悪化する一方だと地元の人たちは言う。「元いた人がいなくなって、もっと裕福な人たちと入れ替わるジェントリフィケーションとは違う」「歴史ある町の中心が空になろうとしている」と、ゴシック地区を含むシウタ・ベリャ(Ciutat Vella)の区議、ガラ・ピン(Gala Pin)氏は言う。

 世界各地の都市で起きている同様の現象を研究する社会学者のダニエル・ソランド(Daniel Sorando)氏は「都市の中心部は金を生み出すための仕掛けとみなされて、労働階級はその外へ立ち退かされている」と語る。例えばフランスのパリ(Paris)では、観光客向け賃貸への乗り換えを含め、過去5年間で2万戸の住宅物件が消えた。そのため家賃は上昇し、人口は減っているとパリ市の担当者は述べた。

 立ち退きに反対する元活動家だったバルセロナ市のアダ・クラウ(Ada Colau)市長は、こうした動きに対抗し、厳しい規制を導入。同市は昨年、観光客受け入れの許可を得ずにマーケティングをしたとして、民泊仲介サービスの「エアビーアンドビー」と「ホームアウェイ(HomeAway)」に対し、それぞれ60万ユーロ(約7800万円)の罰金を科した。

 年間3000万人が訪れるバルセロナでは、同市の収益性に目を付けた投資家らの影響で家賃などの価格の上昇が激しい。ある不動産業者の顧客の半分は、別荘や投資物件を探している外国人だという。

 家賃の高騰にもめげずに住み続けたとしても、人混みに騒音、日用品を売る店の不足などに悩むことになる。「家賃の値上がりで追い出されなくても、日々のプレッシャーに耐えられなくなる」と、ある地元の住民グループの活動家は話した。

 そうしたことから、人文地理学者のソコロ・ペレス(Socorro Perez)氏は「住む人のいない都市や死んだ地区」が結果的に生まれると話し、「都市は娯楽と消費の塊、いわば観光版ファストフードになっていく」と語った。(c)AFP/Daniel Bosque and Michaela Cancela-Kieffer