【6月29日 AFP】南米ベネズエラの首都カラカス(Caracas)で今週、最高裁判所の建物にヘリコプターから手りゅう弾が投げつけられるなどした「クーデター未遂」とみられる事件で、エリート警官兼アクション俳優の男が主犯格だったことが分かり、注目を集めている。この事件について、ベネズエラ国内では様々な陰謀説も上がっている。

■自画像は「タフガイ」

 日焼けした肌に筋骨隆々の体。オスカル・ペレス(Oscar Perez)容疑者(36)は、ベネズエラの平均的な警察官よりもビン・ディーゼル(Vin Diesel)さんのようなアクションスターたちとの共通点の方が多いかもしれない。

 ペレス容疑者は、画像共有サービス「インスタグラム(Instagram)」のアカウントに銃を使ったスタントをする写真や映画に出演した際の自らのインタビューを投稿。実在するタフガイとして自分をアピールしていた。

 現地紙によると、ペレス容疑者は「ヘリコプター操縦士、戦闘潜水員、落下傘部隊の隊員」であり「父親、友人、俳優でもある…だが私は、一度家を出れば、二度と帰れるかどうか分からない男だ。死は作戦の一部だからだ」と述べていた。

■警官、アクション俳優、そして「テロ」容疑者へ

 ベネズエラ政府は、盗難ヘリコプターから最高裁の建物に手りゅう弾を投げつけ、内務省に向かって発砲した反乱警官らをペレス容疑者が率いたとしている。ニコラス・マドゥロ(Nicolas Maduro)大統領は事件は「テロ」行為で、クーデターの企ての一部だと主張。ペレス容疑者の背後に米中央情報局(CIA)が動いていると非難した。

 ペレス容疑者はインターネット上に投稿された動画に登場し、最高裁上空の「展開部隊」の一員だったと認めている。また自分たちの部隊を「神の戦士たち」と呼び「われわれはこの犯罪的な暫定政府に反対する兵士、警察官、公務員からなる連携部隊だ」と述べ、マドゥロ政権に対抗するようベネズエラ国民に呼び掛けている。

 28日の時点で、ヘリコプターは発見されたが、ペレス容疑者の足取りはつかめていない。

 ペレス容疑者は2015年に映画の共同プロデューサーと俳優を務めていた。この映画は2012年にカラカスで実際に発生したポルトガル人実業家の拉致事件に基づいたものだった。インタビューでペレス容疑者は、子どもたちが犯罪に手を染めないように啓発するのが、この映画制作の動機の一つだったと語っている。

 俳優として活動する前のペレス容疑者は、ベネズエラ警察の犯罪捜査局の空挺(くうてい)部隊に所属し、警察犬の訓練士も務めていた。