■政府の自作自演説

 ベネズエラではこの3か月間、社会主義政権のマドゥロ大統領の退陣を求める反対派のデモが毎日続いており、これまでに77人の死者も出ている。

 一方、マドゥロ大統領はここ数か月、中道右派の野党勢力と米政府が自らに対するクーデターを計画していると非難してきた。

 ヘリコプターによる目立つ攻撃や、ペレス容疑者が公開した動画、さらに映画に関わる彼の経歴などから、マドゥロ大統領に対する批判勢力の間では政府の自作自演説を疑う声が上がっている。

 野党出身のフリオ・ボルヘス(Julio Borges)議会議長は報道陣に対し、「自作自演だと言う人もいれば、本当(の事件)だと言う人もいる」と述べた上で、「どちらにしろ非常に深刻だ。ベネズエラのこの状況がずっと続くことは不可能だという点だけは言える」と指摘した。

 マドゥロ大統領は先週、陸軍、海軍、戦略司令部、憲兵隊などのトップを入れ替えたことを発表した。英情報調査会社IHSマークイット(IHS Markit)のアナリスト、ディエゴ・モヤオカンポス(Diego Moya-Ocampos)氏は「ヘリコプターによる事件は政府の自作自演の可能性がある。人々の関心をそらすとか、治安部隊内での粛清を続けるために将校らの決起を挑発する狙いがあるのかもしれない」と述べた。

■マドゥロ政権「米政府の陰謀」

 一方、マドゥロ政権と足並みをそろえるベネズエラ最高裁は28日、マドゥロ批判の最先鋒に立つルイサ・オルテガ(Luisa Ortega)検事総長に対し、資産凍結と渡航禁止を適用した。また前日27日には、米国の侵略を可能にするためにマドゥロ大統領に対する陰謀を企んだとされる批判派の5人が逮捕されたと、大統領自らが発表した。サムエル・モンカダ(Samuel Moncada)外相は、クーデター計画の疑いについて多くの国が「沈黙」していると非難している。

 欧州連合(EU)のキャサリン・レイ(Catherine Ray)報道官は、ベネズエラの緊張と暴力的状況は「さらに一歩悪化したと思われる」とし「すべての当事者に暴力の停止と武力行使の回避を呼び掛ける」と述べた。(c)AFP/Esteban ROJAS